「ポチ=犬」と勝手に解釈する人に欠けている視点 先入観がモノの見方をおかしくしてしまう
「読む」「書く」「聞く」「話す」の4つのうち、最も重要な能力はどれでしょうか? 答えは、「読む力です」というのは、元外交官で作家の佐藤優氏です。氏曰(いわ)く、「読んで理解できないことは、聞いてもわからない。読んで理解できないことは書けないし、話せない。読む力をまず鍛えることが大切です」。
最近、日本人の「読む力」が落ちていると言われます。とくに論理的に読むことが苦手な人が増えているとか。文章を論理的に読めないと、書き手がどのような倫理構造で話を展開しているかを把握することができません。どうすれば読む力を身につけられるのか。佐藤氏が新刊『読解力の強化書』をもとに、読む力を問う例題を出題し、解説します。
「ポチ=犬」と勝手に解釈していないか
たとえば以下の文章があったとき、あなたはどう読んで、どう判断するでしょうか?
「弱い犬はよくほえる。ポチはよくほえる。だからポチは弱い犬である。」
この文章を読むと、3段論法として一見成立しているかに見えます。ですが、ポチが犬かどうかが明示されていません。ポチはもしかしたら虎かもしれません。そうなると、「ポチは弱い犬である」とは言えないということになります。重箱の隅を突くようなへ理屈だ、と言う人もいるかもしれませんが、じつはこのように文章をしっかり吟味して判断する力が読解力には不可欠です。
この問題は、東京大学名誉教授で哲学者の野矢茂樹さんが書かれた『論理トレーニング101題』(産業図書)から引用したものです。
ポチという名前から、私たちはそれが犬だと自然に判断してしまいがちです。しかし、それは先入観にすぎません。その先入観が、私たちの正しいものの見方をおかしくしてしまうことがあるのです。さらにもっと細かく言うならば、「弱い犬はよくほえる」という前提が合っているとしても、よくほえる犬がすべて弱い犬だというわけではありません。
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