茨城「自動運転バス」は地方の救世主になりうるか

人口2万の町が初導入、未来の交通に期待と課題

「道の駅さかい」を始点に、多目的施設「シンパシーホール」と高速バスターミナルを結ぶ2系統が運行中。病院や郵便局、銀行などの付近に停留所がある(記者撮影)

東京から高速道路で1時間半の距離に、鉄道の通っていない小さな町がある。茨城県境町。2万4000人の町民が暮らしている、いわゆる「鉄道空白地帯」だ。

そんな境町を、一風変わったバスが走る。水色と黄色の装飾が施された小ぶりのバスが、時速20キロメートルで住民を運んでいる。この11人乗りのバスには、運転席やハンドルがない。なんと自動運転で走っているのだ。

現在の法規制上、自動運転車であってもオペレーター(運転手)が1人乗務する必要があり、ゲーム機のコントローラーのような操作器がある。運用面でも、交差点や路上駐車などの障害物があった際などに、オペレーターが手動で操作する必要がある。とはいえ、道路を走っているときやバス停に止まるときなど、走行時間の大半はバスが自動で動く。

導入に向けて町長が自ら動いた

車両はフランス・ナビヤ社製。2014年創業で、自動運転のソフトウェアや車両を開発するベンチャー企業だ。日本ではエレクトロニクス商社であるマクニカが2020年から代理店契約を結んでおり、自動車用の半導体やセンサーを長く手がけてきた強みを生かし、販売のほか技術サポートなどを提供している。

境町には鉄道駅が存在せず、路線バスも十分とは言えない。65歳以上の高齢者の割合が29.5%と約3割を占める中、運転免許を返納したくてもできない状況だった。かねてこうした状況に課題を感じていた橋本正裕町長が、2019年11月にインターネット上で自動運転バスの実証実験に関する記事を発見。実証実験を行っていた企業と連絡を取り始めた。

早くも2020年1月に町議会での予算承認と住民の試乗会を済ませ、2020年11月から実際に町内で定期運行をスタート。「90歳の方が運転するのと、自動運転バスで移動するのとではどちらが安全か」(橋本町長)と考え、議論した結果、答えは明らかだった。

最初は、多目的施設と道の駅を結ぶ片道2.5キロメートルを1日4往復(8便)する形だったが、2021年2月からは町民の要望に答える形で便数やルートが拡大し、現在は合計で1日24便の運行だ。運賃は無料で、9月26日までの10カ月で延べ3950人が乗車したという。

高齢化が進みながら公共交通機関の乏しい地方の自治体で、近い将来に切り札となるかもしれない自動運転バス。実は、国内の自治体として公道で自動運転バスが定期運行するのは、境町が初めてだ。本格的に普及するには、乗り越えるべき課題がある。

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