アフガン撤退はエネルギー地政学に何を及ぼすか

日本エネルギー経済研究所の小山堅氏に聞く

小山氏は「テロとの戦いが、多くの混乱と混迷の種を作った」と述べた(撮影:尾形文繁)
アメリカの対テロ戦争は国際エネルギー情勢の観点からどのような意味を持つのか。そして、アメリカ軍のアフガニスタン完全撤退は今後のエネルギー地政学にいかなる影響を与えるのか。日本エネルギー経済研究所の専務理事・首席研究員を務める小山堅氏に聞いた。

 

エネルギー供給の中心地域で深まる混迷

――2001年の同時多発テロ事件から20年続いた対テロ戦争は、国際的なエネルギー情勢にどのような影響を与えてきたといえますか。

一言でいえば、地政学的な緊張が中東において20年間ずっと続いてきたということだ。

旧ソ連の崩壊後、アメリカの安全保障上の脅威は国家ではなく、非国家主体であるテロ組織へと変わり、それが現実のものとなったのが9.11だった。その結果、アメリカはテロとの戦いに本腰を入れ、まず9.11の首謀者であるビン・ラディンをかくまったとされるアフガニスタンに向かい、タリバン政権を転覆させ、新政権を樹立した。

そして、次の展開がイラク戦争(2003年)だった。テロ組織の支援や大量破壊兵器の製造を理由にサダム・フセイン体制を打倒し、新生イラク国家を誕生させる。まさにアメリカは、新しい中東に安定した秩序をつくり上げようという理念に燃えていた。

しかし、テロとの戦いはそうした理念とは裏腹に、むしろ中東情勢の混迷を深めることになる。民主的国家を目指したイラクは終戦直後から大混乱に陥り、イスラム国(IS)の誕生を招き、テロの温床となった。また、派生して内戦状態に陥ったシリアで大量の難民が発生する。難民は欧州へ流れ出て、テロが欧州やアジアに拡散した。

――アメリカの対テロ戦争を機にさまざまな問題が一気に噴出したというわけですね。

さらなる問題は、中東におけるイランのプレゼンス拡大だ。イラクのフセイン体制を崩壊させた結果、アメリカにとって望ましくないイランの台頭を呼び起こしてしまった。そのイランが核開発を進めることで、アメリカは中東における核兵器の問題にも向かい合わざるを得なくなった。

本来なら、テロとの戦いに勝つことで、アメリカは世界の安定と自国のセキュリティを実現するはずだった。だが、結果的には多くの混乱と混迷の種を作り、それが原油やLNG(液化天然ガス)というエネルギー供給の中心である中東地域にずっと残る形で今日に至っている。

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