米国株の下落は長引かないと明確に言える理由 「岸田政権樹立」だけでは日本株上昇は限定的?

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イエレン財務長官(左)とパウエルFRB議長の関係はFRB時代は「上司と部下」だった。パウエル議長の続投も、市場の大きな関心事だ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

9月20日にアメリカ株式市場は、中国恒大集団の債務不履行の可能性に関する報道を受けて急落する場面があった。だが世界の株式市場は2、3日で落ち着きを取り戻した。9月28日にはS&P500種指数が再び2%以上下落するなど不安定な値動きは続いているが、はたして今後はどうなるだろうか。

中国では企業の債務拡大と不動産価格上昇が、2010年以降相互補完的に続いていたが、これを牽引していた新興企業が資金繰り難に直面したことで、「リーマン危機の再来」とメディアで報じられた。新型コロナの発生を契機に中国発の情報への信頼性がさらに低下する中で、中国発のリスクに対する警戒が強まったことがセンセーショナルな報道を生み、株式市場が動揺したのだろう。

ただ、2008年のリーマンブラザーズなどの破綻で世界的に金融システムが麻痺して危機が起きた背景には、世界中の多くの金融機関がレバレッジをかけて過剰に不動産リスクをとったことがあった。一方、中国を含めた新興国の不動産市場に対する先進各国の金融機関によるリスク投資は、現状かなり限定的だろうと筆者は推測している。

平成バブルと中国バブルの「共通点」「相違点」とは

また、新興不動産開発企業である中国恒大集団のバランスシートにある債務金額が33兆円と巨額であると報じられ、この数字の大きさが強調された。一方、中国の大手銀行の自己資本はかなり潤沢と公表されており中国の金融システムは頑強と、多くの銀行アナリストによって説明されている。もちろん、1990年代に起きた日本の不良債権問題の歴史を振り返ると、当局の監督下にある銀行の自己資本などのデータは、都合が悪い事実を隠匿する官僚組織のインセンティブがあるので、必ずしも信用できる訳ではない。

ただ、当時の日本と現在の中国には共通点もあるし相違点もある。日本で金融危機が起きた経緯を振り返ると、まず不動産価格を下落させる政治意向を受けて、経済当局による経済引き締め政策が強烈に行われた。

そして、マクロ安定化政策が成長押し下げ方向に長期にわたり運営され、経済成長率低下と資産デフレが同時に起き、それが「一般物価の価格下落(デフレ)」という他国で見られない深刻な状況をもたらした。そして、資産デフレが不良債権を増やしさらに資産デフレが強まるという悪循環に至り、銀行部門の自己資本が大きく棄損したことが金融危機を招いた。

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