薄氷の中国恒大集団、政府、個人にも影響が大きい マネックス証券専門役員の大槻奈那氏に聞く

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中国恒大集団の江蘇省・啓東の巨大プロジェクト。当局はプロジェクトで調達された資金が他の用途に流用されないか、監視しているという(写真:Bloomberg)
中国恒大集団の債務危機は長引きそうだ。社債の利払いの延期や簿外の理財商品のデフォルトが起きており、資産売却も進めているが、年明けには社債の償還期限も迎える。中国政府としては年内にメドをつけることが望ましいが、舵取りは難しい。クレジット、不動産を含む国際金融市場に詳しいマネックス証券専門役員でチーフアナリストの大槻奈那氏に話を聞いた。

まるでエンロン、あらゆる分野に進出

――すでに実態的にはデフォルトの状態にありましたが、9月29日、グループの保有する盛京銀行の株式を国有企業に100億元(約1700億円)で売却すると発表しました。

9月23日に国外社債8353万ドル(約93億円)については利払いが延期され、30日間の猶予期間に入っていた。9月29日には別の社債の利払い期日も予定されていたので、資金調達が必要だった。形式上は債務不履行になっていないが、営業上の支払いも滞っている模様だ。この後も利払いは続く。銀行であれば、金融システムを守るという観点から、国有企業が買いやすかったのだろう。ただ、来年に入ると元本の償還期限が来る。3月、4月に集中している。まだまだ先は見通せない。

気になるのは、売掛金の大幅な増加だ。昨年12月末から今年6月末まで5000億円程度だったのが、2.5兆円規模に急に増えている。現金化できていない可能性が高い。資本金は1.6兆円程度なので、超ハイレバレッジだ。

簿外で売られた理財商品などでは、不動産を7割引きといったディスカウントで渡すという代物弁済が試みられているが、それでも、債権者のデモが発生するなど合意を得ていない。

――バランスシートの規模や実態は?

連結ベースでのバランスシートの規模は33兆円にのぼり、決算資料で見ると、「簡略化」されたグループ組織図だけで4ページにもわたるなど、かつてのエンロンみたいに、さまざまな分野に手を出してしまっている。どこからほころびが出るか、わからない。業務をまず整理する必要がある。

不動産も玉石混淆で、広州は庶民的で北京は高級路線、などともいわれるが、その実、非常に質の悪い物件もあるようだ。床が薄くて歩いただけで下の階に響くなどとも指摘されている。とにかく業容がスピードをもって拡大し、日本の三菱地所、三井不動産、住友不動産を束にしたよりも大きい。

実は巨大不動産会社は意外に破綻しない。財務力が弱いと資金繰りがつかないので、そもそも成長できないためだ。不動産会社最大の経営破綻は、2009年のアメリカのジェネラルグロースプロパティーズだが、総資産は3兆円強(約290億ドル)と、恒大の10分の1だ。恒大については国がこれまで放置してきたのが問題だ。

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