実刑確定、池袋暴走「上級国民」裁判に残る違和感 なぜこの事故ばかり大きく騒がれたのか

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飯塚幸三元被告は一審判決に対して控訴せず、禁錮5年の刑が確定した(写真:共同通信)

東京・池袋で乗用車を暴走させ、母子2人が死亡、9人に重軽傷を負わせた自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三元被告(90)の禁錮5年の実刑が確定した。

2019年4月の事故直後から「上級国民」のレッテルを貼られた飯塚元被告は、裁判で「ブレーキを踏んだが、利かなかった」などと車の不具合による無罪を主張していた。

だが、9月2日に言い渡された判決で東京地方裁判所は、車には異常がなく、事故原因をアクセルとブレーキの踏み間違いと認定。そのうえで裁判長が判決を読み上げたあとに、「判決に納得するなら、責任と過失を認め、遺族に真摯に謝っていただきたい」とまで呼び掛けていた。

控訴期限の16日を前に飯塚元被告は控訴しない意向を示し、そのまま確定した。今は在宅から収監による刑の執行の手続きがとられている段階だ。

同じく逮捕されなかった元東京地検特捜部長

飯塚元被告が「上級国民」と揶揄されるようになったきっかけは、池袋の事故の2日後、神戸市のJR三ノ宮駅前で市営バスが横断歩道に突っ込み、20代の男女2人が死亡、4人が負傷するという事故が発生したことだった。

当時60代の市営バスの運転手はその場で現行犯逮捕されたにもかかわらず、飯塚元被告は高齢と事故による怪我もあって身柄を拘束されることがなかった。ちなみに、こちらのバス運転手も自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われ、禁錮3年6月の実刑判決を受け、神戸市を懲戒免職処分になっている。

この待遇の違いに、元高級官僚で退官後も業界団体の会長や大手機械メーカーの取締役などを歴任し、事故の4年前には瑞宝重光章を叙勲していた飯塚元被告の経歴に注目が集まり、「上級国民」だから特別扱いを受けているのだ、というSNSの書き込みが瞬く間に拡散していった。そこに裁判で過失を認めようとせず、車のせいにして言い逃れようとして遺族感情を逆撫でする態度がいっそう、世間の非難を燃え上がらせていた。

だが、これで「上級国民」と呼ぶのであれば、飯塚元被告と同様の暴走事故を引き起こして人命を奪いながら逮捕もされず、車のせいにして一審の有罪判決を不服に控訴している、もう1人の「上級国民」がいる。飯塚元被告が旧通産省の高級官僚ならば、こちらは元東京地検特捜部長だ。

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