中国「不動産危機」は経済発展モデルの転換点か 淘汰と危機管理の両立をエコノミストが提言

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中国では不動産市場の冷え込みが強まるなか、債務危機に陥ったデベロッパーを政府が救済すべきかどうかが論議を呼んでいる(写真は深圳市のマンション群)

中国では政府による不動産相場の抑制政策が効果を表すにつれて、不動産市場の冷え込みが強まっている。最近発表された2021年8月の不動産販売および不動産投資の統計データは、いずれも下げ足を速めた。そんななか、今後の不動産規制のあり方をどのように考えるべきだろうか。

「長期にわたる経済発展を通じて、中国の不動産市場にはすでに大量のストックが形成された。(これからの)経済発展は不動産開発への依存からいつか脱却しなければならない。今こそ、その重要な転換をスタートさせる潮時だ」

大手格付会社、中国誠信集団の董事長(会長に相当)でエコノミストの毛振華氏は、9月17日に開催された中国マクロ経済フォーラムの月次分科会でそう発言した。

毛氏は「都市の再開発や住民の居住環境改善などのニーズはまだある」と認めつつも、中国における爆発的な不動産開発の時代はすでに過ぎ去ったとし、「(競争力を失った企業やプロジェクトの)淘汰やスローダウンが必要だ」と述べた。

個別企業の問題より経済全体への影響を注視

「政策執行のペースに注意を払い、その他の要素とバランスを取ることで、リスクを抑え込む必要がある」(毛氏)

経済発展モデルの転換期には、多少の痛みを伴うことが避けられない。それでも過大な損失の発生を予防し、許容範囲内に抑えることはできるというのが、毛氏の考え方だ。

市場関係者の間では最近、中国不動産大手の恒大集団に代表される不動産デベロッパーの債務危機が注目を集めている。それについて毛氏は、「細心の注意を払いながら、断固たる措置を講じて対処すべきだ。その際には(問題企業の)仕入れ先や販売先の利益、マンションを購入した一般市民の利益、関連する雇用などを優先的に守り、そのうえで全体の局面をコントロールしなければならない」と述べた。

本記事は「財新」の提供記事です

さらに毛氏は、「防ぐべきなのは個別企業の債務危機(の爆発)ではない。それが経済全体に与えるインパクトを注視しなければならない」と指摘。そのうえで、中国政府の監督当局が個別の問題の影響について調査・判断し、経済発展の不動産開発への依存度を下げると同時に、金融市場でのシステミックリスクの発生を防ぐことで、(発展モデル転換の)痛みを最小限に抑える努力をしなければならないと強調した。

(財新記者:范浅蝉)
※原文の配信は9月19日

財新 Biz&Tech

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