超一流の経済学者と向き合う清滝教授の「流儀」

プリンストン大学・清滝教授がすべてを語る

清滝教授は経済学の総本山であるアメリカで自身の理論を磨いた(撮影:尾形文繁)
中央銀行が大規模な金融資産の購入を通じてマーケットの流動性を高める「非伝統的な金融政策」。その理論化を主導し、2008年のリーマンショックの鎮火に貢献したのが、プリンストン大学の清滝信宏教授だ。
清滝氏にとって、大学院時代に「このままでは宇沢(弘文)先生のミニチュア版になってしまうよ」と先生に言われたことが、アメリカ行きを決める大きな要因だった。
自分の理論を磨くために試行錯誤を繰り返したアメリカでの日々。当時を振り返る清滝氏の口からは、議論を交わした超一流の経済学者たちの名前が何人も出てきた。
(本記事は全5回で配信している清滝教授のロングインタビュー3回目です)

 

――正統的なケインズ後継者と言われるポストケインジアンなどは、学界で異端扱いされて、主流派経済学者との議論はかみ合っていません。アメリカの主流派の中でもまれてきた清滝さんも、標準的学説を修正するうえで苦労されたのではないでしょうか。

理論をしっかりと組み立て、それを数学のモデルにして、ある程度考え方の違う人たちを説得することは大事だと思う。

ミネソタ大学にいたとき、「エドワード・プレスコット(現アリゾナ州立大学教授。ケインズ理論とは対極にある経済学の最右派と位置づけられる。)の意見を聞いてみよう」とモーアと一緒にオフィスを訪ねたことがある。

2人で一生懸命、黒板に書きながら説明をしたら、プレスコットは「ふん、ふん」と聞いているが、時々黙ってしまう。

「先生、聞いています?」と言うと、「聞いているよ」と。

説明を終えて最後に「どう思いましたか?」と聞いたら、「説得されてもいいけど、今ではない」と返ってきた(笑)。その後に書いた論文に対して、「正しい方向に向かっているから、そのまま続けろ」と言ってくれた。

プレスコットは、実にドグマティック(独善的)に見えるが、1対1で話すとけっこう柔軟な人だ。僕とは割と相性が合った。一度、「僕も(プレスコット氏の研究分野である)リアルビジネスサイクルをやらなければダメでしょうか」と聞いたら、「やるな」と言った。

――そうなんですか?

「お前は自分の得意なことをやればいい」という。それが「比較優位」なのだろう。

清滝信宏教授のインタビューは無料の東洋経済ID登録でお読みいただけます。

第1回 宇沢弘文氏の教えから昇華した「独自モデル」

第2回 中央銀行を魅了した「清滝理論」の核心

第3回 超一流の経済学者たちと向き合う「流儀」

第4回 コロナ下の金融政策、デジタル通貨の未来

第5回 日本の低成長、格差、超高齢化に送る処方箋

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