「実家の片づけ」は日本経済の縮図だ あふれ返ったモノ、売れない家に悩む子世代

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「私たちの年代は最近、友人と会うと実家の片付けが話題になる。介護や“終活”と並んで人生後半の大きなテーマよ」

東京都心部に住む60代女性の豊田恵子さん(仮名)は言う。

恵子さんの実家は2011年の東日本大震災をきっかけに土台が損傷。建物はまだ築35年で使えたが、修理は不可能と判断し、半年をメドに急いで取り壊すことに決めた。

戦争を経験した両親はモノを大切にして、「いざというときのために」と何でも捨てずに残していた。木造3LDKの家屋はモノであふれ返っていた。押し入れや物置も含めて、30坪の家にはモノがそうとう入ることを知った。「捨てる」「残す」の判断は業者に任せられず、身内とえり分けていったが、時間はかなりかかった。「働きながらではとてもできない」と感じた。

不用品の処分がボトルネックに

ボトルネックになったのは不用品の処分。自治体の指定日に大量のゴミを出すと苦情が入るので段階的に捨てた。有料の処分場へレンタカーを使って何度も持ち込んだり、出し切れない家電や家具は業者に処分を依頼したり。

苦心しているのは残すかどうか迷うもの。母は千代紙で折る江戸姉様人形を作るのが趣味だったようで、押し入れに約300体もあった。千代紙も衣装箱5つ分もあり、調べたところ今では絶版のものがほとんど。手刷りで価値も高く、人形とともに処分できずにいる。食器や花瓶など中途半端な高級品は処分方法が見つかっていない。なんだかんだと不用品の処分には100万円以上の費用を要した。

親と離れて暮らす子世代に実家問題が降りかかる――。そんなケースが日本のあちこちで起こっている。子世代の年齢はさまざまだが、ボリュームゾーンは50~60代。親の死や介護などに直面している世代が中心だ。実家に残された親の荷物の整理から相続、空き家管理、売却や解体など。問題はさまざまだが、こうした一連の「実家の片付け」には、多かれ少なかれ苦労を要する。

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