西武園「わらしべ作戦」で狙う遊園地「世界一」の座 西武HD後藤社長✕刀・森岡CEOスペシャル対談2

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森岡:肝心なのはお金よりもアイデア。西武園ゆうえんちにとって100億円は結構な金額だ。500億〜600億円あればもっといろんなことができる。ゴジラ・ザ・ライドのようなアトラクションを3つも4つも作れる。

対談する西武HD後藤社長(左)と刀の森岡CEO(撮影:尾形文繁)

でもそれは最適解ではない。なぜならそれは過保護な親が社会人になった子供にフェラーリを買ってあげるようなもので、お金をかけるだけでは西武園ゆうえんちに本当の経営力は身につかない。若者が一生懸命アルバイトをして中古の軽自動車を買って運転の喜びを知り、さらに働いて新型のカローラを買い、少しずつステップアップして最後に自分の力でフェラーリを買う。それが本当の喜び。

いきなり親にフェラーリを買ってもらった若者は50年後には人生に失敗して牢屋に入っているかもしれないが、こつこつとお金を貯めてフェラーリを買った人は50年後には豊かな人生を送っているはずだ。「こういう経営力を作りたい」と後藤さんがおっしゃっていた。

お金を「最高のアイデア」と交換する

後藤:私は前歴が銀行員なので、テーマパークや遊園地の失敗事例を山ほど知っている。最初は絶叫マシンを入れて集客できても、いずれ飽きられて、設備も陳腐化して客がこなくなる。新しいマシンを入れたくてもその資金がなく、結局閉園に追い込まれる。そんな事例をたくさん見てきた。

西武園ゆうえんちをそういう状況にはしたくない。今の森岡さんのお話の中でさすがだなと思ったのは、森岡さんの頭の中には次に何をどのタイミングで仕掛けるという戦略がしっかりとあることだ。今はまだ戦略をオープンにできないとのことだったが、ぜひみなさんには期待していただきたい。

森岡:ゴジラ・ザ・ライドや今回の花火は、みなさんが期待する遊園地のクオリティをはるかに超えていると思う。今後もここでしか体験できない価値を次々に提供して、従来の遊園地のイメージをひっくり返し、西武園ゆうえんちは世界最高の遊園地になる。僕らがやろうとしているのは、単なる集客施設の話ではなく、今使えるお金を最高のアイデアと交換して、そこで生まれたお金をさらに大きなアイデアと交換していくというわらしべ長者戦略。どんなビジネスもよみがえる。遊園地ビジネスは自分には関係ないと思わず、ぜひいっしょに頑張っていきましょう。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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