バイデン演説で露呈した「アフガン撤退」の詭弁

高崎経済大学・三牧氏に聞く対テロ戦争20年

2001年のアメリカ同時多発テロ後、米大統領は世界に2択をつきつけた(写真:dpa/時事通信フォト)
アフガニスタンでの国家建設失敗と、瞬く間に招いてしまった武装組織タリバンの復権――。2021年8月末のアメリカ軍完全撤退後、「他国を造り替えるための軍事作戦は終わりだ」と、バイデン大統領は国内外に宣言した。
アメリカが20年にわたって繰り広げた対テロ戦争とは何だったのか。そして、国際戦略にはどんな変化が起きているのか。国際関係論やアメリカ外交を専門とする高崎経済大学の三牧聖子准教授に話を聞いた。

 

――8月31日、バイデン大統領はアフガニスタンからの完全撤退完了について演説を行いました。

バイデン大統領は、「20年という区切り」を強調し、そもそも「戦争の目的は、アメリカと同盟国へのテロ攻撃を防ぐことだった」と撤退を正当化した。しかし、20年間のアフガニスタン戦争で追求されたのは、決してこのような限定的な目的だけではなかったはずだ。真摯な発言ではない。

2001年のアメリカ同時多発テロ後、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「世界はわれわれにつくのか、テロリストの側につくのか」と、単純な二択を突きつけ、アフガニスタン戦争を始めた。9.11直後は、本来は報復感情に突き動かされた性急な武力行使に批判的であるべき知識人を含め、アメリカ全体が愛国ムードに飲み込まれた。

確かに国際テロ組織アルカイダの犯行は非常に卑劣で、許し難いものだった。しかし、彼らをかくまったタリバン政権に対し、しかもアフガニスタン市民を広範に巻き込んだ戦争を展開してよかったのか。もっと批判的な意見、冷静な態度があるべきだった。

戦争目的をどんどん拡大

さらに、戦争目的を拡大していったのはアメリカだ。開戦の翌月には、ファーストレディのローラ・ブッシュ氏がラジオに登場し、「アフガニスタン戦争は対テロ戦争というだけでなく、(タリバン政権下で迫害されている)女性の権利と尊厳をめぐる戦争でもある」と演説を行った。その後、戦争が長期化する中、アメリカは、アフガニスタンに「近代国家をつくる」「民主主義を植え付ける」と目的をどんどん拡大し、戦争を正当化していった。

みまき・せいこ/2003年3月東京大学教養学部卒業。日本学術振興会特別研究員、米ハーバード大学ウェザーヘッド国際問題研究所アカデミックアソシエイトなどを経て、2017年から現職。著書に「戦争違法化運動の時代 『危機の20年』のアメリカ国際関係思想」、共訳・解説に「リベラリズム 失われた歴史と現在」など。

今回、バイデン大統領が、あたかも国家建設や民主主義などは最初から目的ではなかったかのように、「戦争の目的はテロ防止に限定されていた」と撤退を正当化したことは、こうした経緯を意図的に忘却するものだ。

――イラクもそうですが、アメリカが外からやって来て、民主的な国家を建設するというのは、言うは易く行うは難しいですね。なぜアメリカはそれを簡単にできると考えがちなのでしょうか。

第2次世界大戦後の日本という「成功例」があることも1つの理由かもしれない。しかし、日本の場合、大戦前から欧米のさまざまな影響の下、近代的な国家作りが進んでいた歴史があり、むしろそれは例外的だ。それ以外の国・地域でアメリカが試みた民主国家建設はほとんどうまくいったためしがない。

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高崎経済大学・三牧氏に聞く
バイデン演説で露呈した「アフガン撤退」の詭弁

東京大学・佐橋氏に聞く
無様なアフガン「敗走」で米国は何を失うか

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