感染リスク承知で「ごみ収集」清掃員の悲壮な覚悟 当たり前の暮らしを支えてくれる人がいる

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ごみ清掃の現場に入った筆者が見たこと、体験したことをお伝えします。写真は袋が破けて散乱した中身を手で集めている様子(筆者撮影)
デルタ株の感染が急拡大し、新型コロナの収束が一向に見えない中、8月に東京都台東区の清掃事務所でクラスターが発生し、不燃ごみの収集ができなくなるなど、日常生活が危うくなるくなるケースも出てきた。地方自治を専門とする藤井誠一郎・大東文化大准教授は著書『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』でごみ収集の現場で労働体験、参与観察を行い、コロナ禍における清掃事業の問題を浮き彫りにした。同書より一部を抜粋して紹介する。

ほこりやミストが飛散…マスクで防げぬ感染リスク

筆者は東京都北区の清掃現場に入っていたが、そこで経験した感染リスクの高い作業について2点述べてみたい。

1点目は小型プレス車(以下、小プ)への積み込み作業である。小プではバケットに積まれたごみを圧縮してタンクの中に押し込むが、プレス機が回りだしごみを圧縮した際に、ごみから出てくるえたいの知れぬほこりやミストが飛び散る。作業員はそれらを作業中に体内に吸い込んでいる。

当初はそれほど気にはしていなかったが、たまたまバケットに入らず落ちてしまったごみを拾おうとかがんだときにプレス機が動いた際、目の前でごみから噴き出されてくるほこりやミストが飛散するのを見た。

その量がかなりあったため、作業をすれば結構体内に吸い込んでいるのではないかと不安になった。基本的にマスクをして作業をするため直接それらを吸い込むのではないが、不織布のマスクで完璧に防げるわけでなく、マスクの隙間から吸い込んでいると推察される。

とはいえ、筆者の知る限りでは、これまでごみ収集作業自体によって新型コロナウイルスに感染したという話はなく、ごみからのほこりやミストはとくに体に影響を及ぼすわけではないのかもしれない。そうは言っても、微量でも吸いたくはない物質である。

2点目は、感染者が使用した可能性がある使用済みのティッシュやマスクを拾い上げる作業である。このような作業を行うのは、①プレス機の回転によりごみ袋が破裂してバケットから飛び出た場合、②鳥獣の被害に遭いごみ袋が裂かれ周りに散乱している場合、③ごみ袋がしっかりと結ばれておらず持ち上げた瞬間に中身が散乱する場合、である。

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