TikTok運営「バイトダンス」、教育事業で人員削減 中国政府の教育改革政策で積極雇用が裏目に

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中国政府の教育改革政策の影響により、バイトダンスは急膨張したオンライン教育事業のリストラを迫られている(写真は同社ウェブサイトより)

ショート動画アプリTikTok(ティックトック)の運営企業として知られる、中国のアプリ開発大手の字節跳動科技(バイトダンス)。同社はここ数年、新規事業としてオンライン教育事業の拡大に注力してきた。

ところが7月24日、中国政府が(詰め込み教育の是正のために)子供たちの宿題の量の制限や学習塾への規制(訳注:新規開設の禁止や非営利化)などの教育改革政策を発表。そのあおりを受け、バイトダンスの教育事業部門は急転直下のリストラを迫られている。

8月5日、バイトダンスの教育事業ブランドである「大力教育」の多数の従業員が、解雇およびそれに対する補償金についての通知を受け取った。財新記者の取材によれば、今回の人員削減は教育業界で「K12」と呼ばれる幼稚園児から高校生までの年齢層をターゲットにした事業が対象だ。

大力教育は、K12分野のオンライン教育アプリ「清北網校」やAI英語教育アプリ「瓜瓜龍英語」など、幼児向けから成人向けまで幅広い年齢層を網羅する教育サービスを提供している。バイトダンスの関係者によれば、教育事業部門のリストラは事実であり、対象者には勤続年数に2を加えた数字に月額平均賃金をかけた金額の補償金が支払われるという。

今回のリストラについて、教育事業部門の別の従業員は「最も影響が大きいのは清北網校と瓜瓜龍英語の低料金コースだ。(そのサービスに携わる)人員の約半数が解雇される。通常料金コースは継続する方針のようだ」と明かした。さらに別の従業員によれば、幼児向け事業のセールス部門でも大規模なリストラが計画されているという。

バイトダンスは2019年5月、2000万元(約3億3780万円)を投じてオンライン教育プラットフォームの清北網校を買収。このサービスは、講師全員が中国の2大名門大学として知られる清華大学または北京大学の出身であることを売り物にしている。翌年3月には、自社開発した瓜瓜龍英語をスタートさせた。

「1万人雇用」宣言でチームが急膨張

そして2020年10月末、バイトダンスはオンライン教育事業の統合ブランドとして「大力教育」を立ち上げた。そこには前出の2つのサービス以外にも、就学前教育サービスの「ゴーゴーキッズ」、2019年に買収した成人向け教育ブランド「開言英語」などが含まれている。

本記事は「財新」の提供記事です

教育事業のさらなる拡大に向け、バイトダンスは2021年2月末、大力教育の講師、教材開発、アプリ開発、事業運営、商品企画などの人材を「今後4カ月間で1万人雇用する」と宣言したばかりだった。

ところが、この宣言の5カ月後に中国政府が教育改革政策を打ち出したことで、急膨張したチームのスリム化を余儀なくされた格好だ。

(財新記者:関聡、範俏佳)
※原文の配信は8月5日

財新 Biz&Tech

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