サイバー被害防止!中国の「メモリー保護」技術 安芯網盾が16億円のシリーズAの資金調達完了

✎ 1〜 ✎ 613 ✎ 614 ✎ 615 ✎ 最新
拡大
縮小
コンピューターの内蔵メモリーのデータ保護を手がける安芯網盾は、16億円を超える資金調達に成功した(写真はイメージ)

サイバー犯罪の被害が拡大するにつれ、新たなデータ・セキュリティ技術が投資家の関心を集めている。8月3日、コンピューターの内蔵メモリーのデータ保護を手がける新興企業の安芯網盾が、1億元(約16億8700万円)を超えるシリーズAの資金調達を完了したと発表した。リード投資家は中国のプライベート・エクイティ・ファンドである高瓴創投だ。

内蔵メモリーのデータ保護は、新方式のサイバーセキュリティ技術の1つである(訳注:専用のハードウェアを用い、あるアプリケーションが、ほかのアプリケーションが使用しているメモリー領域にアクセスできないようにする技術)。

「コンピューターシステムはハードウェア、基本ソフト(OS)、アプリケーションソフトの3層構造になっている。過去20年間、サイバーセキュリティ技術は基本ソフトとアプリケーションの階層をカバーしてきた。わが社はコンピューターシステムの土台であるハードの階層に焦点を当て、セキュリティ問題の解決を図る」。安芯網盾のCEO(最高経営責任者)を務める姜向前氏は、財新記者に対してそう説明した。

従来のサイバーセキュリティ技術と比べて、内蔵メモリー保護の難易度は高い。姜氏によれば、(サイバー攻撃に対する)個々のアプリケーションソフトの防御は比較的容易だ。しかし(システムの土台により近い)基本ソフトやハードの防御は、技術的解決に複雑さと困難さが伴う。

安芯網盾は中国のインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)でモバイルセキュリティの首席専門家を務めた姜氏と、アンチウイルス仮想マシンの技術専門家の姚紀衛氏が、2019年に共同で創業した。2人は著名な理工系大学であるハルビン工程大学の卒業生だ。

主要顧客は大企業や政府機関

安芯網盾の主要顧客は、業務プロセスが複雑で多数のIT設備を保有する大企業や政府機関である。同社が公表した顧客リストには、姜氏の出身企業の百度や、全国海関(税関)情報センター、ソフト開発大手の金山軟件(キングソフト)などが名を連ねる。姜氏によれば、そのほかの顧客は金融、エネルギー、交通、科学技術などの業界が多いという。

本記事は「財新」の提供記事です

これらの大企業や政府機関の業務量は膨大だ。コンピューターシステムに脆弱性が見つかった場合、それを修正するパッチを適用する過程では、通常は業務を中断しなければならないため大きな痛みを伴う。そのため(業務に支障を来さない)新たなサイバーセキュリティ技術には大きな需要がある。

「中国国内では4000万台のサーバーが稼働中だ。今後はこの市場に対する(内蔵メモリー保護技術の)浸透率を引き上げていく」。姜氏はそう意気込みを語った。

(財新記者:何書静)
※原文の配信は8月4日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT