埼玉・小川町メガソーラー、希少野生動物への懸念 予定地で絶滅危惧種のミゾゴイとサシバが繁殖

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事業予定地の近くで生まれたサシバのヒナ(写真:鈴木邦彦氏提供、本記事の鳥類の写真は営巣や繁殖に影響を与えないよう観察・撮影されました)
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国の環境影響評価(環境アセス)手続き中の埼玉県小川町のメガソーラー事業予定地で、絶滅危惧種のミゾゴイとサシバの繁殖が確認された。どちらも日本で夏を過ごす渡り鳥で、里地里山を代表する鳥。近年生息数が激減し、国と県が絶滅危惧種に指定している。地元の住民と研究者らが独自の調査を重ね、8月25日に結果を公表した。事業者の調査は極めてずさんだとして、環境アセス準備書を厳正に審査するよう、国と県に求めた。

地元住民と研究者のチームが手探りで調査に挑んだ

調査を行ったのは、埼玉県内の住民団体「比企の太陽光発電を考える会」の鳥好きのメンバーと、生態系や野鳥の研究者でつくる「野鳥調査チーム」。

ミゾゴイは、コウノトリ目サギ科の茶色い鳥。フィリピンや台湾などで冬を過ごした後、春になると日本に来て本州から九州にかけての低い山で繁殖する。環境省のレッドリストでは「絶滅危惧II類」、埼玉県のレッドデータブックでは「絶滅危惧IB類」。ミミズや沢・渓流のサワガニなどを食べる。

国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(2016年版)は、ミゾゴイを「野生での絶滅の危険性が非常に高い」というカテゴリーに区分し、世界での生息数を600~1700羽と推定していた。昨年の改訂版で、推定生息数は5000~9999羽としたが、少ないことには変わりがない。土地の開発で営巣地が減っていることが激減の背景とみられる。

調査チームは、小川町に住む会社員、鈴木邦彦さん(69歳)と妻、治美さん(63歳)が基礎的調査を担当。1月から2月にかけ、事業予定地内と周辺の45の沢筋を歩き、4つの古い巣を見つけた。4月からはICレコーダーによる録音を開始。さいたま市に住み、自然保護支援事業を行う「みぬまサウルス企画事務所」代表の小林みどりさん(65歳)が、音楽好きの夫のコンピューターソフトを使って、音声解析に取り組んだ。

こうした基礎調査に地元の鳥類研究者や生態系保全の専門家が協力し、アドバイスや調査試料の鑑定を行った。

調査チームが事業予定地に接する集落を訪ねたときのこと。「何を調べているの」と住民に聞かれ、「ミゾゴイの調査です」と答えたところ、住民は「ああ、ヘソゴイね」とつぶやいた。聞けば、集落の子どもたちは、「夏の暑い夜、ヘソを出して寝ていると、ヘソゴイが来てヘソを取られてしまうよ」と言われて育ったという。小林さんは「ミゾゴイは少し前までたくさんいて、今よりもずっと身近な鳥だった。暑くなる時期を前に鳴き始めるので、そんな言い伝えがされたのだと思う」と話す。

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