和歌山が「モビリティ変革」の震源地となる理由 モビリティ産業不毛地帯で活躍するベンチャー

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和歌山発のベンチャー、glafitが開発・製造する製品(筆者撮影)
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今、「モビチェン(モビリティ・カテゴリー・チェンジャー)」なる、新しいモビリティの発想が全国で話題になっている。

警察庁が2021年6月28日付で「車両区分を変化させることができるモビリティ」という通達を出したからだ。ここでの「車両区分の変化」とは、原付き(げんつき)と自転車との変化を指す。

具体的には、ナンバープレートの上から自転車の図柄が覆いかぶさるような仕組みで、外から見て車両区分(モビリティ・カテゴリー)が変化したことがわかるというものだ。

モビチェンを作動させ、ナンバープレートにカバーをする様子(筆者撮影)

ペダル付き原付きは、原付きとして走行する場合は当然、車道を走るが、ペダルを漕いで自転車のように走行しても車両としては原付き扱いであるため、自転車専用道などを走行すると道路交通法違反になってしまう。

モビチェンはこうしたユーザー目線での“矛盾”を解消した。開発したのは、ベンチャー企業のglafit株式会社(鳴海禎造社長)だ。

なぜ、和歌山のベンチャーなのか?

glafitの本拠地は和歌山県和歌山市にある。和歌山市やその近隣地域は自転車、バイク、自動車に関連するモビリティ産業が集約しているわけではない。「なぜ和歌山で?」という素朴な疑問がわく。

また、規制緩和に辿りつくため、同社は2019年に生産性向上特別措置法に基づく内閣官房「規制のサンドボックス制度」に申請しているが、この申請書には和歌山市長が連名になっている。なにかと“和歌山推し”が強い事案なのだ。

その背景について、尾花正啓・和歌山市長は2021年7月2日、和歌山市役所で行った記者会見で、今回の通達に対する受け止め方を、社会情勢を交えて次のように話した。

2021年7月2日、警察庁の通達を受けて記者会見する和歌山市の尾花正啓市長(写真:和歌山市役所)

「和歌山市は現在、多極型コンパクトシティのまちづくりに取り組んでおり、その中でモビリティに期待できる役割は大変大きいと考えている。また地方都市では、人口減少、少子高齢化などのさまざまな社会問題を抱えており、特に和歌山県は、以前から原付きや軽自動車の保有率が高い」

そんな背景がある中で、モビリティが解決策となる可能性を感じていたところ、鳴海氏から実証試験に関する話があり、「行政課題に関わるものとして、和歌山市も共同で実施することになった」という。

通達については「大きな成果であり、今後、大きな(社会の)変革につながっていくものと感じている」と次のステップに向けた抱負を述べた。

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