外国人記者たちが語るオリンピック取材「舞台裏」 日本はローテクで英語ができない国と思ったが

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食事から施設、無観客試合、ボランティアまで、外国人記者たちが見た東京オリンピック取材の舞台裏とは(写真:Alexandra Garcia/The New York Times)

2012年に、2020年のオリンピックの開催都市に東京が選ばれたとき、私の海外にいる記者仲間たちは東京に来るのが待ちきれない、と言っていた。この瞬間、東京は地球上で最も刺激的な目的地となったのだ。

あらゆる有名なシェフ、DJ、建築家、俳優らが東京を訪れるようになった。特に、日本のライフスタイルを知りたい女性ジャーナリストたちの間で東京は人気だった。そのほとんどが男性であるスポーツジャーナリストもオリンピックの機会に合わせて日本を訪れたがっていた。

来日前の「書類作業」が煩雑すぎた

ところが、新型コロナウイルスが2020年の東京オリンピックに冷や水を浴びせた。国境は封鎖され、最終的に許可を得たスポーツ記者のみが来日のための準備をすることになった。日本オリンピック委員会(JOC)が無観客開催を決めると、さらに多くの記者が取材をキャンセルした。

「フランスの地方紙がオリンピックに記者を送らなかったのはこれが初めてだ」と、2020年の東京大会が参加4度目のオリンピックとなるフリーランスジャーナリストのロイス・グラッセ氏はは話す。オリンピックには8400人の記者が訪れる予定だったが、最終的に来日したのは半分以下の4000人だ。

無観客より外国人記者たちを「がっかり」させたのは、彼らが来日前に直面する羽目になった日本のお役所仕事だ。5月の中頃からJOCは、大会中のコロナ対策の規定に関する複雑で、長く、内容のわかりにくいメールを海外のジャーナリストたちへと送り始めた。

記入を求められた書類のほとんどは、日本以外では使われていないような、時代遅れのフォーマットを使用していた。「日本の組織委員会はGoogle Docsの存在を知っているのか?」とあるジャーナリストはあきれる。

また、ジャーナリストたちが質問すると、まったく返事がないか、「わかりません」という返事が返ってくるかのどちらかだったという。訪れる前の印象から言えば、日本は「ローテクで英語の通じにくい」国で、オリンピックは厄介なイベントのように思えた。

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