「エンパシー」を使って働きやすい環境を整える策 ブレイディみかこ氏が語る"エンパシースキル"

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他者の靴を履く……それは、同情・共鳴できない人の立場に立ち、その人の気持ちや考えを想像してみる力のことで、知的作業でもあります(写真:fizkes/iStock)
近年、ビジネスの場でも“エンパシー”(=意見の異なる相手を理解する知的能力)というスキルに注目が集まっている。新著『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』が話題のブレイディみかこさんに、編集部からの質問に回答してもらった。

なぜエンパシーが必要なのか

――近年、企業研修でもエンパシーの学びを導入するところがだんだん増えています。なぜ働く場においてエンパシーが必要なのでしょうか。

エンパシーにもいろいろ種類がありますが、私が本で主に取り上げた「コグニティブ(認知的)・エンパシー」は、単に誰かに同情したり共鳴するシンパシーや、それとよく似た「エモーショナル(感情的)・エンパシー」と違います。

自分が必ずしも同情・共鳴できない人の立場に立って、その人の気持ちや考えを想像してみる力のことで、知的作業でもあります。だから「スキル」とも呼ばれます。英語では「他者の靴を履く」という慣用句で説明されることが多い。

顧客の気持ちや考え、ニーズなどを正しく想像するスキルがなければ、顧客が求めているものがわからないので物やサービスが売れなくなります。

職場においても共に働いている人々への想像力がなければコミュニケーションがうまくいかず、業務が滞ります。他者への想像力は個人の生まれながらの資質と考えられがちでしたが、「スキル」という考え方が定着したこともあって研修で導入されるようになってきました。

エンパシーの定義はいくつかの種類があるということは定説になっている。大まかに、
①コグニティブ(認知的)・エンパシー
②エモーショナル(感情的)・エンパシー
③ソマティック・エンパシー
④コンパッショネイト・エンパシー
の4つがある。

――欧米の職場でもエンパシースキルというのは注目されているのでしょうか。

「empathy in the workplace」というキーワードで検索していただければ、夥しい数の英語記事が上がってきますので注目度の高さはわかっていただけるでしょう(笑)。新自由主義は競争の原理で動くので、職場でもつねに競争させられてメンタルを病む人が少なくない時代です。

「こういう時代はもう終わらせたい」という新自由主義疲れのようなものが職場でも前景化してきているのでしょう。メンタルヘルスやワークライフバランスの問題が注目を集めるにつれ、エンパシーが重視されるようになってきました。

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