聖火最終ランナー「大坂なおみ」だった必然的理由 開会式から見えた今回の東京五輪のメッセージ

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世界中の注目を浴びた聖火最終ランナーは大坂なおみ選手だった(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

東京オリンピックの開会式は、無観客という異例のスタイルで行なわれた。

開催直前にそれぞれの過去の言動が要因となって作曲担当者が辞任し、演出担当者が解任されるという大混乱に見舞われ、はたして開会式が無事に行われるのだろうかというムードの中、セレモニーは定刻通りスタート。大幅に時間をオーバーしたものの無事に終了した。

コロナ禍による1年の延期に伴い「華美なお祭り騒ぎにしない」として簡素化されたという内容は、過去の大会に比べれば確かに華やかさとスケール感においてやや物足りなかったのも事実だろう。

その中でも、木の間伐材で作られた「木の五輪」は、自然と共生してきた日本の伝統を表していた。

また、選手団入場の場面で演奏されたのは「ドラゴンクエスト」に始まり「ファイナルファンタジー」「モンスターハンター」など日本が世界に誇るゲームソフトの音楽だった。

「日本らしさ」「環境への配慮」「多様性」の演出意図

随所に「日本らしさ」と「環境への配慮」「多様性」を織り込もうとする演出意図は理解できた。上手くいった部分もあれば「これはどういう意図なのか?」と思う箇所も見受けられた。賞賛もあれば厳しい声も数多くあるだろう。

それで良いのだ。すべての視聴者が「満足」する内容などは、どのみち不可能なのである。

そして迎えた入場行進。

無観客でも各国選手は堂々と入場をしていた。会場は無観客でも中継画面を通じて自国と世界に映像が伝わっていることを理解しているのだろう。

それ以上に、この1年間、同じ苦悩や葛藤を抱えてきた「同志」として、世界中のアスリートと共に開会式を迎えられたことに喜びを感じているように見えた。

テレビで入場行進を見ていた視聴者も、選手たちの姿にここまでのゴタゴタをしばし忘れて見入っていたのではないだろうか。

最後に登場した日本選手団も、緊張しながらも晴れがましそうな表情が印象的だった。行進をしながら魅せる笑顔には、やはりここまでの苦難をひとまず乗り越えたという思いが滲み出ていた。

橋本聖子大会組織委員会会長と、冗長なIOCバッハ会長のスピーチを経て、天皇陛下による厳かにして簡潔な「開会宣言」が行われた。

その後、大会ピクトグラムの形態模写パフォーマンスによる紹介や市川海老蔵さんと上原ひろみさんの「和洋コラボ」を経て、ようやくクライマックスの「聖火点灯」を迎えた。

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