無観客「五輪会場エリア」を回って見た悲痛な現実 五輪後に重くのしかかる施設維持費という問題

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バリケードに覆われた厳戒態勢の「東京アクアティクスセンター」(写真:筆者撮影)

2021年7月23日。新型コロナウイルス感染拡大で1年延期になっていた東京五輪の開会式が東京・国立競技場で行われ、世紀のスポーツイベントが幕を開ける。

しかしながら、ご存じのとおり、首都圏は目下、コロナ「第5波」が到来し、緊急事態宣言の真っ只中。無観客開催という前代未聞の事態に発展しており、祭典ムードとは程遠いのが実情だ。コロナ感染者が増えれば増えるほど、人々の不安や恐怖は高まり、五輪中止や打ち切り論も消えていない。

それでも19日からは予定どおり、首都高速の1000円上乗せや五輪専用レーンの導入など交通規制がスタート。警戒態勢も強化されているなど、異様な空気が漂っている。こうした現実を受け止めきれない人も少なくないはずだ。その実情を把握すべく、開会式3日前の20日朝、東京湾岸エリアの主要会場地を車で回ってみた。

バリケードで覆われた会場一体

首都高速1000円上乗せが適用される6~22時を回避すべく、出発したのは5時。初台南入口から臨海副都心までの14.3kmを通常料金の630円で通過し、トライアスロンとオープンウォータースイミング会場のお台場海浜公園付近に出た。

お台場エリアは公園一帯がバリケードで覆われていた(写真:筆者撮影)

開幕を前に水質問題が海外メディアによって改めて報道され、懸念が強まっているが、東京湾の現状を確かめようにも会場一体がバリケードで覆われ、何人もの警察官が不審者に目を光らせている状態。もちろん関係者以外は一切、中に入れなかった。

早朝の時間帯ゆえに、ジョギングやウォーキングをする人の姿も見受けられたが、彼らが海を眺めることさえできなくなった。「本番のときは海浜公園で子どもを遊ばせられなくなるのかな……」とコロナ前の2019年夏に現地取材した際、近隣住民数人が顔を曇らせていたが、今になって五輪との隔たりを強く実感しているのではないか。

続いて、カヌー・スプリントやボート競技会場となる海の森水上競技場に向かった。総工費308億円を投じて2019年夏に完成した同施設は鉄道駅が車で15分以上離れており、路線バスの本数も極端に少なく、バス停まで徒歩20分もかるというロケーションの悪さが課題。

五輪本番は東京テレポート駅からシャトルバスで観客を輸送する計画になっていたが、無観客決定でそれも不要に。アクセス面の問題が強調されることはなくなった。

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