日本人がわかっていない「音声市場」本当の凄み GAFAやマイクロソフトも覇権争いに血眼

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──そして今、世界のIT大手が音声市場の覇権争いに血眼とか。

GAFA、マイクロソフト、ツイッター等々、大手がこぞって参入し、大金を投じてコンテンツ制作力を強化するなど、これまでにない現象が起きています。市場として、「ながら聴き」ができる音声広告はたいへん有望なんです。

多くの人が動画や画像にコントロールされることにウンザリしている。太ってもいない若者に「やせなきゃ」と強迫観念を植え付けるような、邪魔なコンテンツがあふれ返っています。自分が納得できる情報を選び出す作業にみんな疲弊してますよね。それに対し、音声は加工する余地が小さく、うそをつけない。発信者の緊張感とか言葉に込めた感情がそのまま相手の耳に届く。より共感できたり、愛着の湧く存在、等身大のまま信頼を得ることが大事になってきた時代と、音声はとても相性がいい。

動画や画像にない音声の「強み」

──情報コンテンツ選びの物差しが「人」になってきた。

緒方憲太郎(おがたけんたろう)/1980年生まれ。大阪大学基礎工学部卒業後、同大経済学部も卒業。2006年新日本監査法人入社。世界放浪の旅に出た後、Ernst & Young New York、トーマツベンチャーサポートに勤務。15年医薬ゲノム検査事業会社を創業し、18年業界最大手に事業売却。16年Voicy設立、同時にスタートアップ支援会社も創業。

動画や画像の広告が、見た人に即クリックさせるのを狙った速攻刈り取り型とすれば、音声広告はジワジワ染み込んでいくタイプ。スマートスピーカー保有者への調査では、音声広告のほうが「押し付けがましくない」「より興味を引かれる」という回答が多い。例えば通販では、テレビやネットよりラジオ通販のほうが返品率は低い。ブランドの伝達強度も高いから、家や自動車などの高額商品、金融・保険など信頼性が重要な商品など、広告対象も広がります。

そして音声の強みは、読み書きができない子ども、画面が見づらかったり機器操作が苦手な高齢者にも優しいこと。操作する人の音声データが蓄積されていけば、例えば病気で明確に発話できない人の音声も解析・判読してくれるようになる。健常者と同じようにコミュニケーションが取れる時代もやってくると思います。

──SDGsの「誰1人取り残さない」を彷彿とさせるような。

画面を手で操作して調べていたものが、声でグーグルに時間を聞き、「カーテン閉めて」「○○調べて」と指示すればいい。操作がどんどん簡単になる時代が来る。フレンドリーな世界において、音声の役割はすごくデカいと思います。

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