自動車整備士版「Uber」が旧弊から見いだす勝機 整備ベンチャーからみた業界に横たわる課題

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Seibiiには現在200人以上の整備士が登録しており、40都道府県でサービスを展開する(写真:Seibii)
自動車整備士の不足は業界が抱えている長年の課題だ。2014年の日本自動車整備振興会連合会のアンケート調査によると、約半数の整備事業場で整備士が不足していた。特にディーラー深刻では整備士が不足していると回答したのは6割を超し、さらに約15%は「業務に支障をきたす」と答えている。
整備士数は漸減傾向が続いており、2020年には33万9593人(2014年比で2893人減)となっている。そうした中、人手不足に悩む整備士業界に新しい風を吹き込もうとするベンチャー企業がSeibii(東京都港区)だ。
同社は、整備士と車オーナーのマッチングプラットフォーム「Seibii」を運営している。利用者はサイト上でドライブレコーダーの取り付けや消耗部品の交換などを依頼し、Seibiiに登録している200人超の自動車整備士とマッチングする。
実際の作業は自動車整備士が自宅にやって来て行う。利用後は整備士をレビューする制度もあり、整備士版Uberともいえるサービスだ。業界が抱える問題をどう考え、今後、どんな展開をしていくのか。Seibiiの佐川悠社長に話を聞いた。

 

――現在の整備士業界の問題はどこにあると考えていますか。

一般的に車の整備はお客さんからは会計がわかりにくく高いと思われているが、自動車整備士の給料は安い。時給換算すると東京では1000円前後、地方だと800円程度だ。国会でも質問が出ていて、国家資格が必要な職種なのに給料の安さが人手不足に繋がっていると指摘されている。同じ会社でも営業職のほうが給料が高いといった職種間の給与格差もある。

賃金だけではなく評価の問題もある。整備士はお客さんと直接関わる機会が少なく、フィードバックを受けにくい。お客さんには営業が対応し、整備士は直接関わらないというルールを持つ会社もあるほどだ。

整備士が意義を感じにくい

私の実家で利用しているディーラーでは整備士が応対することはなく、スーツを着た営業担当者とだけ話をして終わる。過去に作業現場を見たいと依頼したら、それはできませんと断られた。これでは整備士が自分自身の評価を得る機会が少なく、仕事に意義を感じにくくなってしまい、離職にも繋がる。

問題の根本にはディーラーによる垂直統合の問題があると考えている。新車販売とアフターサービスは、本来違う機能なのにディーラーの下で垂直統合されている。

結果、新車販売で値引きして車検や整備といったアフターサービスで(利益を)回収する構造になっている。そのしわ寄せが整備士にきている。明らかにディーラーの整備は回っていない。予約が取りづらく、場合によってお客さんは2~3週間待たなければならないこともある。

――そうした問題をどう解決していますか。

まずは整備士の方に対価をしっかりお支払いする。現状、時給換算で3000円。Seibiiでは出張して整備を行うので利用者に直接応対する。評価制度もあるのでフィードバックを受けやすく、仕事に意義を感じやすい環境になっている。

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