デジタル庁が担う「デジタル敗戦」からの抜本脱却 理念と法的役割の定義、強力な人材確保が必要だ

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デジタル庁の創設へのあふれる期待とは?(写真:metamorworks/iStock)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

提供側の事情で次々と構築される行政システムでなく

2001年1月6日に施行されたIT基本法は2021年9月1日をもって廃止される。そのIT基本法に基づいた施策を実行するために内閣に設置されたIT戦略本部も解消される。これらの根本からのやり直しとして、デジタル社会形成基本法が準備され、デジタル庁が設立される。

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もはやわが国は、従来のIT技術をベースにした経済的な発展をめざすだけではない。縦割りで運営されていたわが国の行政構造を、デジタル技術を前提とした横連携による耐性のある創造的な発展を可能とする構造にする。提供側の事情で次々と構築されるバラバラの行政システムでなく、提供の理念と目的に基づいて、国民一人ひとり、また、それぞれの産業の要求を主人公とする使命で構築されるシステムに変革する。

あらゆる行政部門が必要なハーモニーを奏で、主人公たちのために機能する社会システムを構築する。その使命はより説得力がなければいけない。データによるエビデンスに基づくことで、新しい日本の社会企画と構築ができる。そして質の高いデータによって、ルールの提案や標準化を先導することで世界に貢献できる。このようなあふれんばかりの期待を担って、首相をトップとして、新しいデジタル庁の体制が誕生する。

新型コロナへの対応に関して、国民からはさまざまな不安と不満が噴出した。それが「デジタル敗戦」と呼ばれたことは記憶に新しい。この言葉が多くの国民の不満を表現した理由は2つある。

1つは、日本の社会でのインターネットやモバイルなどの浸透が明らかであるにもかかわらず、新型コロナ対策においてこれを活用した行政サービスが機能しなかったことにある。もう1つの問題は、それでも提供したデジタル機能を利用したアプリやサービスが、国民にとって使えない、使いにくい、使われない、という事態も露呈したことにある。

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