かっぱ寿司「転職者から競合情報入手」のマズい点 楽天モバイルでもソフトバンク出身者が逮捕

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不正競争防止法違反の疑いで社長が刑事告訴されたカッパ・クリエイト。楽天モバイルはソフトバンク出身の社員が同じく不正競争防止法違反の疑いで起訴された(左写真:今井康一、右写真:尾形文繁)

警視庁は6月28日、回転寿司チェーンの「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト本社を家宅捜索しました。カッパ・クリエイトの社長が、競合する寿司チェーン「はま寿司」の営業秘密を不正に入手していたとして、はま寿司から不正競争防止法違反の疑いで刑事告訴されたことによるものです。

カッパ・クリエイトの社長は、はま寿司の親会社であるゼンショーホールディングスの元役員だったのですが、ゼンショーを退職後、カッパ・クリエイトの顧問となった2020年11月から12月中旬にかけ、元同僚より、はま寿司社内で共有されていた日次売り上げデータなどを数回にわたり個人的に送付を受けていた疑いがもたれていて、現在も捜査が続いています。

ソフトバンクから楽天に転職した社員が逮捕

競合会社への転職に伴う情報流出事件は、今回に限ったことではありません。携帯電話大手ソフトバンクの技術職だった元社員が、競合である楽天モバイルに転職した際、高速通信規格「5G」技術に関する秘密情報を不正に持ち出して利用したとして、2021年1月に不正競争防止法違反の疑いで逮捕され、2月に起訴されています。

5月6日には、ソフトバンクが元社員と楽天モバイルに対し、10億円の損害賠償、持ち出した電子ファイルなどの使用、開示の差止請求および廃棄請求、基地局の使用差止請求および廃棄請求などを求める訴えを東京地裁に起こしたと発表しました。ソフトバンクは、約1000億円の損害を被っており、今回の請求額10億円はその一部にすぎないと主張しています。

不正競争防止法とは、営業秘密を不正に持ち出したり、利用したりする行為などを禁止し、事業者間の公正な競争を確保するための法律です。法律違反に対しては、民事的には差止請求や損害賠償請求ができます。また、刑事罰も定められており、違反者個人に対しては最高で10年以下の懲役または3000万円以下の罰金が科されますし、違反者が属する法人などに対しても最高で10億円の罰金が科されます。

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