中国の製造業「景気回復」の勢いに頭打ち感の背景 「財新中国製造業PMI」、6月は3カ月ぶり低水準

✎ 1〜 ✎ 559 ✎ 560 ✎ 561 ✎ 最新
拡大
縮小
2021年6月の財新中国製造業PMIは前月より0.7ポイント低下した(図表作成:財新)

中国製造業の景気回復の勢いに頭打ち感が出てきた。7月1日に発表された2021年6月の財新中国製造業購買担当者指数(製造業PMI)は51.3と、前月(52.0)より0.7ポイント低下。3カ月ぶりの低水準を記録した。

製造業の事業活動は、供給と需要の両面で5月より鈍化した。6月の生産指数は拡大基調と縮小基調のボーダーラインは上回ったものの、2020年4月以来の低さに落ち込んだ。新規受注指数も3カ月ぶりの低水準となり、外需を反映する新規輸出受注指数はボーダーライン割れぎりぎりだった。

背景には、新型コロナウイルスの世界的流行の長期化により、製造業のサプライチェーンが不安定になっていることがあるようだ。6月は製造業の購買活動も鈍化したが、その原因について、調査対象企業からは「サプライヤーの在庫不足に加え、物流も遅延しがちになっている」などの声が寄せられた。

景気減速下でのインフレのリスクも

もっとも、需給の変化は製造業の雇用にはまだ大きく影響していないようだ。6月の雇用指数は3カ月連続で拡大基調を維持し、7カ月ぶりの高水準に上昇した。調査対象企業の一部からは「新規受注が拡大しており、増産に向けた採用増加を計画している」との回答があった。

一方、懸念が高まっていた工業用金属や燃料など原材料のインフレ圧力は、値上がり幅そのものは依然大きいものの、5月より幾分緩和された。製造業は原材料の仕入れコストの上昇を製品価格に転嫁しているが、6月の工場出荷価格指数の上昇率は5月より目に見えて低下した。

本記事は「財新」の提供記事です

「インフレ圧力は多少和らいだが、原材料の仕入れ価格や製品の工場出荷価格は上昇し続けており、一部では原材料の供給不足が問題となっている。今年後半(の製造業)は、景気が減速するなかでインフレが続くリスクがあり、難しい対応を迫られる」。財新グループのシンクタンクCEBMのシニアエコノミストを務める王喆氏は、そうコメントした。

(財新記者:範浅蝉)
※原文の配信は7月1日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT