民放キー局が「TVer」に任せた2つの大役と不安 ネット同時配信も秒読み、ローカル局で課題も

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民放キー局などが出資する無料広告型動画配信サービス「TVer」。新型コロナの追い風もあり、アクティブユーザー数が急増している(記者撮影)

「ネットフリックス」や「アマゾン・プライム・ビデオ」ばかりに視聴者を取られている場合ではない――。コロナ禍で定額型の動画配信サービスが広く定着し、民放テレビ局はますます危機感を強める。

そんな中、各社が大きな期待を寄せるのが、テレビ番組の見逃し配信を中心とした動画配信サービス「TVer」だ。TVerにとってもコロナ禍の巣ごもり需要が追い風となった。月間アクティブユーザー数は昨年、前年比2倍となる2000万人に到達。今年は3000万人を目標に掲げる。

もともとTVerは民放キー局5社と大手広告代理店4社の共同出資で設立された。昨年6月には民放キー局5社が追加出資し、直近の7月にも関西を拠点とする準キー局5社が新たに資本参加すると発表した。

目指すは「次のマスメディア」

TBS出身でTVerの社長を務める龍宝正峰氏は「キー局の追加出資後はコンテンツ数もかなり増えてきた。ユーチューブには届かないかもしれないが、次の『マスメディア』になっていく自信はある」と手応えを語る。追加出資前の昨年6月頃は1週間当たり300番組だったのが、直近では350を超えたという。

テレビ局がTVerに期待する理由は2つある。1つが、テレビ広告収入の減少だ。テレビ広告はネット広告のように消費者の趣味嗜好に応じたターゲティングができないなどの理由で低迷が続いている。2019年には電通が集計する国内広告支出の統計「日本の広告費」で、テレビ広告がネット広告に初めて追い抜かれた。

コロナ禍でも同様の傾向は続いている。キー局各社はコロナ禍における大手広告主の出稿抑制を受け、2020年度上半期にはテレビ広告収入の中心であるスポット広告が、一時は前年同期比40%減と大きく落ち込んだ。下半期以降は回復基調にあるが、あるテレビ局関係者は「今後の地上波テレビの広告市場が伸びるとは想定しにくい」と話す。

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