7月1~7日、歴史に埋もれた政治めぐる「名言7選」 一日一考、日本の政治について考える

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過去の7月1~7日にまつわる、古今東西の政治をめぐる7つの文章をご紹介します(写真:mits/PIXTA)
天皇、皇族から政治家、作家、歌手、運転手や無名の庶民にいたるまで――。1月1日から12月31日まで、1日1つの政治にまつわる文章から、この国のいまについて考える原武史氏の著書『一日一考 日本の政治』。
本日7月1日から7日までの1週間にちなんだ、歴史の深い闇に埋もれた言葉や、たとえ公表されたときに話題になってもいまや忘却されてしまった数々の名言と解説を本書し、私たちの日常を読み解くカギとする。

身分が下の者が意見を言いにくいのは江戸時代も同じ

7月1日
荻生徂徠(おぎゅう・そらい/寛文6(1666)‐享保13(1728)/儒学者)

近年はとかく御年寄・若年寄も番頭抔(など)も、下の理筋を立る事をきらひ、理筋有事も顔付を悪敷(あしく)し、ふあいしらいにする。其人理強くて押へられぬ事なれば、智恵を廻して外の事にて押ゆる様にし、下に物をいはせまじきとする。如此(かくのごとく)なる故、下たる人、兎角何事もだまるがよきぞ、上の機嫌にさかはぬがよきぞといふ事にみなみななる。<『政談』(平石直昭校注、平凡社東洋文庫、2011年)>

荻生徂徠は、具体的な幕政改革案をまとめた『政談』を8代将軍の徳川吉宗に献上した。このなかで近年の悪しき風習として、身分の下の者が理路整然と意見を述べることを上の者が嫌い、言わせないようにするために、下の者は本音を言わずにこびへつらうようになっていることを挙げる。だがこうした風習は、幕末まで改められなかった。ペリー来航直後の嘉永6(1853)年7月1日から、老中の阿部正弘は、大名から旗本、庶民に至るまで、幕政に関わらない人々に初めて意見を求め始めた。

7月2日
米原万里(よねはら・まり/1950‐2006/ロシア語通訳、エッセイスト)

今でも社会主義の良さはあると思っているんです。住宅や食料、医療、教育、文化という人間にとっての生活必需品をお金儲けの対象からはずしたこと。今の日本を見ていると特にそう思いますね。<『終生ヒトのオスは飼わず』(文春文庫、2013年)>

『週刊文春』1998(平成10)年7月2日号に掲載された「『家』の履歴書」の一節。米原万里は父が筋金入りの日本共産党員だったこともあり、大学時代に共産党に入党した。しかし1985年に中央委員会派と違う意見の仲間が都大会代議員に選出されるや、仲間とともに党員権を停止され、1年間査問された。これを機に米原は共産党から離れるが、社会主義そのものを完全に捨てたわけではなかった。米原の眼には、「小さな政府」を目指す新自由主義の弊害が、この時点ですでに見えていたようだ。

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