法人税率「最低15%」の国際基準が議論される意味 G7が合意、実現すれば「地殻変動」起こるのか?

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これまでずっと続いてきた各国の「法人税率引き下げ競争」に、やっと幕が下りようとしています(写真:artswai/PIXTA)

6月5日まで開かれていた主要7カ国(G7)の財務大臣会合で、法人税率の引き下げ競争に歯止めをかける共同声明が出されたことが注目されている。多国籍企業に対する共通の最低税率として15%以上を目指す方針だ。利益率の高いグローバル企業への課税強化策として、利益の一部に課税して各国が公平に配分するルールの導入の検討が始まった。

G7で「国際課税ルール」が話題になることは、これまであまりなかったことだ。G20(主要20カ国)での「合意」が必要とはいえ、すでにG7のトップ会談では歓迎されており、これまでずっと続いてきた各国の「法人税率引き下げ競争」に、やっと幕が下りようとしている。

新型コロナウイルスのパンデミックに伴う経済対策によって世界各国が財政難に落ち込み、新たな財源を模索していることが大きな要因となっている。

グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンを総称する「GAFA」に代表される巨大IT企業が、世界中のマーケットを席巻していく中で、時代は大きく変わった。

タックスヘイブンを使った巧みな節税方法

もともとGAFAといった巨大IT企業は、これまでほとんどの国で税金を払わずに、課税回避をしてきた事はよく知られている。アイルランドやルクセンブルクといった「タックスヘイブン(租税回避地)」に収入を集中させることで、大きな節税効果を上げてきた。これらに欧州の本部を置き、そこで税金を払うような仕組みをとっている。たとえばアイルランドの法人税率は12.5%とほかよりも低い税率が適用されているからだ。

実際に、GAFA4社の税負担率は、世界の5万社の平均の6割程度にとどまっているというデータもある。経済のデジタル化に対して、世界の税制が対応しきれていないのだ。

世界の主要約5万7000社の財務データを分析すると、会計上の法人税等を税引き前利益で割って算出した税負担率は、2018~2020年の3年間で、以下のような結果になったと日本経済新聞(5月13日付ネット版より)が伝えている。

●全企業……25.1%
●情報通信業(世界)……24.6%
●米国企業……20.7%
●GAFA……15.4%

ちなみに、企業別でみるとGAFAの15.4%に対して、トヨタ自動車は24.8%、シーメンス(ドイツ)24.7%、サムスン電子(韓国)27.9%、ネスレ(スイス)23.8%となっている。やはり、GAFAが支払っている税金が10ポイント程度少ないことがわかるはずだ。

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