ブラックストーン「中国の不動産大手」買収の背景 SOHO中国の創業者一族が経営権の譲渡に合意

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SOHO中国は、アメリカの投資ファンドのブラックストーン・グループから買収提案を受けたと発表した(写真は同社ウェブサイトより)

6月16日、中国の不動産開発大手のSOHO中国は、アメリカの投資ファンドのブラックストーン・グループから買収提案を受けたと発表した。同社の共同創業者である潘石屹会長と、妻でCEO(最高経営責任者)の張欣氏は、持ち株の売却に合意した。

ブラックストーンは、英領ケイマン諸島に登記された特別目的会社であるシティトラスト・プライベート・トラストから、同社が間接保有する、SOHO中国の発行済み株式の54.93%を、1株あたり5香港ドル(約70.9円)で購入する。買収総額は236億香港ドル(約3346億円)に達する見込みだ。

シティトラストはSOHO中国の発行済み株式の63.93%を保有しており、その受益権者は潘氏と張氏、そして夫妻の子どもたちだ。ブラックストーンとの取引が完了すれば、夫妻の持ち株比率は9%に下がる。潘氏と張氏はSOHO中国の董事会(取締役会に相当)を退任し、経営から身を引く。

なお、SOHO中国は発表のなかで「ブラックストーンは中国の長期的な経済発展と、北京・上海の不動産市場の将来性に自信を抱いている。この買収を通じて、同社は中国の不動産業界における投資を引き続き拡大する。またブラックストーンが、SOHO中国の事業構造を大きく変えることはない」と強調した。

2年以上にわたって売却先を探していた

今回の発表に至るまでは紆余曲折があった。SOHO中国は、過去に所有物件の売却を重ねてきた。その結果、同社の現在の中核資産は、北京と上海に保有するオフィスと商業施設の複合ビル8カ所となっている。それらの総賃貸面積は約78.5万平方メートルだ。

本記事は「財新」の提供記事です

SOHO中国は保有物件と会社の所有権の売却先を2年近く探していた。 2019年10月、財新記者は各方面への取材を通じて、SOHO中国が中国本土のオフィスビルの売却を検討しているとの情報をつかんだ。ブラックストーンは、売却先の候補の1つとして当時から名前が挙がっていた。

2020年3月には、SOHO中国が同社の株式非公開化についてブラックストーンと交渉中であるとの情報もマーケットに流れた。しかし 2020年8月、SOHO中国は「潜在的取引に関する検討は終了した。取引条件について合意に至らないまま、交渉期限が過ぎた」と発表していた。

(財新記者:牛牧江曲)
※原文の配信は6月16日

財新 Biz&Tech

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