東芝公表の「調査報告書」は結局、何が争点なのか 6月25日に開かれる定時株主総会は大荒れ必至

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昨年の定時株主総会の運営をめぐって東芝が揺れています(写真:ブルームバーグ)

東芝は6月10日、会社法316条2項に基づく調査報告書を公表しました。昨年7月31日に開催された定時株主総会が公正に運営されたか否かを主な調査対象とするものですが、その内容に衝撃が走りました。

約120ページに上る調査報告書の中で、特にインパクトがあったのは「圧力問題」です。すなわち、東芝がいわゆるアクティビスト(物言う株主)対応として、経済産業省に支援を要請。経産省は外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づく権限発動の可能性などを背景として、東芝と一体となって対応し、株主に不当な影響を与えた、と指摘したことです。

外為法は、安全保障上重要な日本企業に対する外資による出資を、事前届け出の対象として規制しています。原子力事業を扱う東芝は安全保障に関するコア業種に指定されています。

経済産業相には、安全保障上の問題があれば事後的な株式の処分(売却)などの措置命令を出す権限があります。

届出や報告命令に従わない場合には刑事罰の制裁もあります。改正外為法が昨年5月から施行され、事前届け出の対象が上場企業の株式10%以上となる取得から、1%以上となる取得に引き下げられ、規制が強化されたタイミングでした。

定時株主総会が公正に運営されたものとはいえない

報告書では、東芝と経産省からの働きかけを受けた株主として、エフィッシモ・キャピタル・マネジメント(エフィッシモ)、3Dインベストメント・パートナーズ(3D)、ハーバード大学基金運用ファンド(HMC)が主に登場しますが、働きかけの方法や程度は株主ごとに異なるものであったとされています。

そして「東芝は、株主であるエフィッシモ、3D、及びHMCに対し、不当な影響を与えることにより本定時株主総会にかかる株主の株主提案権や議決権の行使を事実上妨げようと画策したものと認められ、株主提案権や議決権の重要性、さらにはコーポレートガバナンス・コードが、『上場会社は、株主の権利の重要性を踏まえ、その権利行使を事実上妨げることのないよう配慮すべきである』(補充原則1-1③)と規定していることなどを考慮すれば、本件調査者は、本定時株主総会が公正に運営されたものとはいえないと思料する」と結論付けています。

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