27歳パチプロ男性が「経営者目線」で語る違和感 アルバイトやリゾート派遣で食いつないできた

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編集部あてに「おもしろそうなので取材を受けさせて」というメールを送ってきたフミヒロさん。その意味を尋ねると「インタビューを受けるのも初めてだし、自分もパチプロのおもしろい話をできるんじゃないかと思って」と話していた(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「ひと月程度、ホームレスをしていました」と編集部にメールをくれた、27歳の男性だ。

日給1万5000円に「昇給」

パチプロの朝は早い。

フミヒロさん(仮名、27歳)はある地方都市のパチプロ軍団のメンバーだ。起床は朝6時。“親”といわれるリーダーの補佐をしているので、軍資金の管理や台ごとのデータのとりまとめなどやるべきことは多い。玉を打つ“打ち子”たちにどの店のどの台に座るかの指示を出し、開店後は自身も12時間近くハンドルを握る。閉店後に新人の打ち子にデータのとり方を教えたり、報酬を支払ったりしていると、帰宅は夜中の0時を過ぎる。

「(軍団のもうけは)“期待値”の高い台を探し、その台に打ち子を座らせることができるかどうかにかかっています」

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期待値とは、いくらつぎ込めばどれくらいプラス、もしくはマイナスになるかという理論上の見込みのこと。当然、高いほうが優良台である。期待値は大当たりで獲得した出玉数や1000円当たりの回転数(大当たりを出すための抽選回数)などをもとにはじき出すのだが、その計算方法は結構複雑だ。

フミヒロさんの軍団は、多いときで打ち子ら30人で構成。リーダーである親以外は、フミヒロさんも含めて勝っても負けても決まった報酬を受け取るシステムになっている。フミヒロさんは入団直後は1日7000円で、軍資金の管理などの仕事を任されるようになってからは同1万5000円に“昇給”。多い月で35万円ほどを稼いだ。打ち子らは口コミやTwitterで募集。親の名義で借りたワンルームマンションなどに入居させる。フミヒロさんも家族向けの3LDKの1室に家賃2万円で住んでいるという。

パチプロは意外にも勤勉だった。収入も安定しているように見える。もしどうしても食いぶちに困ったら1日打ち子とかやってみたりしてもいいのではないか――。

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