スプツニ子!語る「DXはまず若手との対話から」

「めんどくさい」がイノベーションと変革のカギ

コロナ禍をきっかけに、日本でも一気に進んだリモートワーク。仕事をする場所だけでなく、仕事の進め方や組織のあり方、そしてワークマネジメントを再考する動きが活発化している。私たちが、本当に「価値のある」仕事をするために必要なこととは何なのか。28歳でマサチューセッツ工科大学(MIT)の助教に就任し、2019年から東京藝術大学デザイン科准教授を務めるアーティスト・スプツニ子!氏に、日本のビジネスシーンに対する「本音」、そして膨大なタスクを回す仕事術を聞いた。
ヘアメイク/AKANE スタイリスト/SOHEI YOSHIDA(SIGNO)

日本でイノベーションが生まれにくい理由

「生理マシーン、タカシの場合。」や「東京減点女子医大」などのアート作品を通じて、ジェンダーの問題やテクノロジーによって変化する社会について世の中に問いかけてきたスプツニ子!氏。東京藝術大学美術学部デザイン科准教授という顔も持ち、自身の制作や次世代育成を行っている。そのベースにあるものは「探究心」だという。

「私はどちらかというと、アクティビスト的なアーティストだと思います。作品を通して新しい視点を提示したいし、それを見た誰かの考え方や感じ方を変えることができたら、と思いながら制作してきました」

ともに数学者である日本人の父と英国人の母の下に生まれたスプツニ子!氏。2013年からマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教、17年から東京大学大学院特任准教授を務めるなど、さまざまな価値観の中で過ごしてきた。そんな彼女は、今の日本社会をどう見ているのだろうか。

スプツニ子!アーティスト、東京藝術大学美術学部デザイン科准教授。英国ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学部を卒業後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)修士課程修了。米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教、東京大学大学院特任准教授を経て2019年より現職。17年に世界経済フォーラムの選ぶ若手リーダー代表「ヤング・グローバル・リーダーズ」、19年にはTEDフェローに選出され、TEDに登壇した。著書に『はみだす力』(宝島社)

「日本での女性登用は、OECDの中ではスタートが遅れてしまったのが現状です。とはいえ、女性の管理職を増やそうとしている企業はすごい勢いで増えているし、これからの数年でかなりの変化を期待してます。性別に限らず、組織の中に多様性を持つことの重要性がようやく浸透し始めたように思います。

異なる価値観を持つ人が組織の中に増えれば、その分、組織やビジネスの課題を発見するためのアンテナの数も増えます。未来を切り開くようなイノベーションって、つまり新しい課題を見つけて解決すること。組織の中の性別・年齢やバックグラウンドに偏りがあれば、それだけ課題を発見するための視点が偏ってしまって、イノベーションが起きにくくなるんです」

日本とイギリスの学校教育を受けてきたスプツニ子!氏。その違いにヒントがあると見る。

《生理マシーン、タカシの場合。》
[2010]“Menstruation Machine — Takashi’s Take” ©️︎Sputniko!

「私自身、学校で遅刻してばかりで宿題も忘れてばかりだったから、こういう印象を持ってるのかもしれないけど、日本の義務教育って子どもの『めんどくさい』という気持ちを抑圧しすぎでは……!?(笑)。よくも悪くも『言われたとおりにコツコツ努力する』ことを美徳とする価値観が、すごく根強いと感じます。でも、実はイノベーションのヒントって結構、『めんどくさい!』って気持ちの中にあると思うんです。その『めんどくさい』という気持ちを大事にして、『じゃあ、どうしたらもっと効率よくできるんだろう?』と変革を起こしていくアクションを、社会でも学校でも、もっと応援したらいいのにと思っています! そうして自由な時間が増えれば、その自由時間で、さらに新しいことを考えられるようになると思うので」

メールに表れている、日本の無駄と労働損失

日本ではこれまで、ビジネス、政治、テクノロジーと、あらゆる分野が男性中心に動いてきてしまった歴史がある。

「人類の約半分は女性。にもかかわらず、これまで月経や妊娠・出産、更年期など女性の体のトラブルに関することを表立って語るのはタブーとされてきてしまいました。そこに潜在的な課題やニーズがあるのに、あまり表面化してこなかったし、それらを解決するためのサービスやプロダクトも十分に開発されてこなかった。だけどこの数年で潮流が変わって、日本でも『フェムテック』が注目されるようになっています」

フェムテックとはフィーメールとテクノロジーを掛け合わせた造語で、女性特有の生きづらさや健康、体に関する悩みをテクノロジーで改善していくムーブメントだ。

「これまでの日本は『家事・育児は女性が担うべき』といった性別役割分担的な価値観が根強かったり、生理や妊娠・出産に関するタブーが多かったりして、多くの女性の人生のポテンシャルが狭められてきてしまいました。それに傷ついたり、嫌な思いをしたりした人も少なくないはずです。だからこそ、日本のフェムテックには多くのチャンスがあると思います。性別や年齢にかかわらず、すべての人が自分らしい人生を楽しめるよう、フェムテックを広げていきたいと思っています」

そしてもう1つ、スプツニ子!氏がよく感じる日本の課題。それは「無駄の多さ」だという。

「日本社会ってたくさんのビジネスマナーがありますよね。名刺交換もややこしいし、例えばメールを1通送るにも、『お世話になります』から丁寧に始めなければいけない。単語登録をして時間短縮している人も多いと思いますが、日本人がお互いに丁寧な仕事メールを書くために年間かけている時間を測定したら、かなりの経済損失が明らかになるのでは……!(笑)。丁寧であることのよさもきっとあるとは思うんですが、1日は24時間しかないので、私はメールに限らず、やらなくてよさそうなことはどんどん削減したいと思っちゃうタイプです」

やらずに済むことはやらない。そのためにスプツニ子!氏は、ビジネスツールを徹底的に活用しているという。例えば、コミュニケーションは極力チャットツールを使い、コロナ禍以前も、ほとんどの打ち合わせはリモートで行っていた。

「コロナ禍を機に、世界でリモート会議が一般化しました。初対面の人との関係構築やチームビルディングには対面のコミュニケーションが有効ですが、スピードを求める場面ではリモートが便利。今後はその使い分けが肝になるんだろうと思います。私自身、オンでもオフでも『効率化マニア』かもしれないです。私がいちばんエネルギーを注ぎたい仕事って、新しいアイデアを生むことだから、それ以外の無駄は極力省きたいんですよね」

ITに強い20~30代を、応援する世の中にしよう

アーティスト、大学准教授として、さまざまなプロジェクトを進めるスプツニ子!氏。多忙な日々だが、膨大なタスクを管理するために欠かせないツールが「Asana」だという。

「Asanaは、単なるチャットコミュニケーションだけでなく、ワークマネジメントもできるのが特徴です。膨大な情報を一目で把握できるので、自動的にチーム全体の状況を可視化できるし、スケジュール管理もスムーズです。本当に質のいいITツールを使えば、『報連相』とか、そんなことを特別にする必要はほとんどなくなります。空いた時間で新しいことを考えたりプライベートを充実させたりすれば、チームのモチベーションアップにもつながる。やらなくていいことはやらない、テクノロジーで効率化できることはどんどん効率化する、それで空いた時間を使って、思いっ切り次のアイデアを考える、それが私なりの『価値ある仕事の進め方』です」

日常的にAsanaを使いこなしているというスプツニ子!氏。プライベートのタスクも入れてフル活用しているそう

日本も効率よく物事を進める人を応援する社会であってほしいと、スプツニ子!氏は期待を寄せる。

「最新のテクノロジーに強いのは、やっぱり20~30代。中堅以上の世代には、年功序列をいったん横に置いて、もっと若い世代の声に耳を傾けてほしいなと思います。若手がITを使って仕事を変革すれば、それによって組織全体のイノベーションやワークマネジメントが実現します。その姿勢が無駄の多い働き方を変えていくし、たくさんのいいアイデアを生むベースとなるはず。それを上の世代が前向きに応援してあげることで、業務効率はもちろん、組織としての総合力も上がっていくと思います」

既存の課題を解決するだけではなく、社会の変化の中から課題を見つけ出し、取り組むことが求められる時代。イノベーションをもたらし、新たな価値を創造するには、多様な価値観に耳を傾け、取り入れ、変わっていくことが必要だ。それこそが、真に「価値ある仕事」につながっていく。

>Asanaの「ワークマネジメント」で、本当に価値ある仕事をしよう