日本が台湾へワクチン提供「恩返し」の重要な意味 正式な外交関係なくても世論次第でかかわれる

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予想外の感染拡大を受けて台湾でもワクチン接種の機運が高まっている(写真:I-Hwa Cheng/Bloomberg)

6月3日、台湾時間の午後6時過ぎ、台湾の主要メディアは一斉に速報を出した。

「4日にも日本が台湾にワクチン提供」

日本政府は4日に、5月から新型コロナウイルスの感染が急速に拡大する台湾に新型コロナワクチンを提供すると正式に発表した。イギリス製薬大手、アストラゼネカ社製で、すでに124万回分のワクチンを載せた日本航空の飛行機は出発しており、台湾時間午後3時前に到着する予定だ。

5月末に日本から台湾へのワクチン提供案が明らかになってから、わずか1週間でのスピード決定だった。感染拡大が収まらず、ワクチンの調達にも難航していた台湾はこの朗報に沸いた。

「3.11」から10年目の日本の動き

2011年の東日本大震災からちょうど10年目。当時、台湾が200億円以上の義援金を贈り、日台の「友情」が注目された。日台関係の節目となる今年、ワクチンを提供することで日本は「恩返し」する形だ。6月3日、茂木敏充外務大臣は「台湾は東日本大震災の際、いちはやく義援金を送ってくれた。困ったときは助け合うことが必要だ」と強調していた。

日本が台湾へワクチン提供する案が検討されていることが明らかになったのは5月27日から28日にかけてだ。台湾の陳時中・衛生福利部長(厚生労働大臣に相当)も「早ければ早いほうがいい。遅れると意味がない」と日本への期待を示していた。

そして6月4日、提供案が明らかになってから1週間でのスピード提供は正式な外交関係がない日台関係にとって異例ともいえる出来事となった。同日にはアメリカも台湾を含む世界各国にワクチンを提供すると明らかにしたが、時期は6月末になるとされ、台湾では日本のワクチン提供の早さにも注目が集まった。

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