日本株の短期下落懸念がなかなか消えない理由 最も重要な米国の景気はどうなっているのか

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カリフォルニア州アナハイムでエンジェルス大谷選手の投球練習を見つめる観客。日常が戻って来ており、アメリカの景気回復自体は本物だ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

結論から入るが、筆者の市場展望の大枠は以前と変わっていない。すなわち日米等を含む主要国の株価は、短期(向こう1~2カ月)は下振れのリスクを懸念するものの、年末にかけては上昇基調を見込む。ただし、日本株の上昇力はアメリカ株を下回るだろう。

投資方針については、それぞれの投資家の考えがあってしかるべきだ。すなわち、どういう投資をすることで何を実現したいのか(「短期的な売買益を得たい」「長期的に先行きの生活資金に余裕を持ちたい」「単に銘柄選びが面白いから趣味でやっている」などいろいろあるはずだ)に沿って各自が自由に判断すべきだと信じる。

世界経済や企業収益の持ち直しの流れは不変

しかし、余計なことを言わせていただけるのであれば、見通しを作成している側の筆者としては、あまり欲張らず、「年末に向けて株価は上昇する」という見通し自体に賛同するのなら、今後下がっても徐々に買い下がり、買い溜めを進めるほうがよいと考える。一番避けたいのは、筆者が予想しているような短期の株価下振れが生じてから、慌てて売却することだ。

それはさておき、見通しに戻ると「年末にかけて主要国の株価が上昇する流れだ」と予想している理由は、すでに明確になっている世界的な経済や企業収益の持ち直しが、まだ持続すると見込んでいるからだ。実に単純だ。加えて特にアメリカでは、引き続き財政面からの経済政策が打ち出されており、日米欧の中央銀行も金融緩和姿勢を少なくとも今年内は堅持するだろう。

それでも「いったん株価が下振れする恐れがある」と見込んでいるのは、特にアメリカにおいて、足元の市場も経済も過熱感が強まっていることによる。アメリカ株が下振れすれば、日本独自の好材料を欠く日本株は、下押しせざるを得ないだろう。

まず、アメリカの株式市場に、さまざまな過熱を示す兆候が広がっている。ごく直近では、7日に発表された4月分の雇用統計の数値だ。「表面上」は弱い数値となった。失業率は3月の6.0%から6.1%に悪化し、非農業部門雇用者数の前月比は3月分が91.6万人増から77.0万人増に下方修正されたうえ、4月分は100万人に近い増加が事前に予想されていたところ、実際は26.6万人増にとどまった。

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