バイデン政権の新政策は世界の潮流を変えるか

ポストケインジアンの重鎮が語る政策の焦点

エプシュタイン教授は雇用計画について「非常に評価できる」と述べた(写真:エプシュタイン氏提供)
バイデン政権は2021年3月末、8年間で総額2.3兆ドル(約250兆円)に及ぶ長期経済政策「米国雇用計画」を打ち出した。大型のインフラ投資を開始する一方、減税が続いていた大企業への課税を強化し、財源確保を目指すものだ。政府支出、租税の両面でアメリカの経済政策を大きく方向転換させる。

これを受け、ローレンス・サマーズ元財務長官(ハーバード大学教授)など主流派経済学者は「規模が大きすぎ、景気過熱やインフレを引き起こす可能性がある」と早くも批判の声を上げ始めた。

ただ、アメリカ内の経済学者の見方はこれだけではない。かねて財政政策と雇用政策の拡大を主張してきたリベラル系の非主流派経済学者は、米国雇用計画をどのように見ているのか。
非主流派の代表格であり、アメリカ民主党左派とも近いポストケインジアンの重鎮のジェラルド・エプシュタイン教授(マサチューセッツ大学アマースト校)に話を聞いた。

──「米国雇用計画」をどのように評価しますか。

非常にいい計画だと思う。化石燃料からの脱却を図るグリーンインフラや道路などの従来型インフラ、育児・教育、高齢者介護など人間のインフラへの投資や、人種・民族間の格差を減らす社会インフラへの投資も非常に評価できる。

8年間で総額2.3兆ドルという規模には、オカシオコルテス下院議員など民主党左派からは「足りない」との批判もある。しかし、民主党は上院でギリギリの過半数であり法案可決は容易ではない。よいスタートを切れるような現実的な計画を出してきたと思う。

──大型支出によるインフレが懸念されています。

3月に可決した「米国救済計画」(総額1.9兆ドル)の効果もあって失業率や設備稼働率は改善され、経済拡大が起こるだろう。結果、一時的な物価上昇は生じると思う。忘れてはならないのは、米国では過去10年間、低インフレこそが問題だったことだ。インフレの兆候が少し見えただけで慌てるのは軽率ではないか。

深刻なインフレはない

米国にはパンデミック(感染症の世界的流行)前から所望時間未満しか働けない大量の低所得者層が存在する。昨年8月にFRB(米連邦準備制度理事会)は戦略を転換し、これらの層の雇用を後押しするため、2%のインフレ目標からの一時的なオーバーシュートを許容することを決めた。

問題は、制御が利かない深刻なインフレがあるかどうかだが、石油危機のあった1973年と1979年に起きたくらいだ。その要因の1つは、1980年代以降、労働法制の変更もあって労働組合が弱体化したことにある。

最近もアラバマ州でアマゾンの倉庫作業従事者が労組を結成しようとしたが頓挫した。労働者心理は温まらず、インフレ期待は生じにくい。また中国やメキシコなどとの国際競争が激しく、これもインフレが起きにくい要因だ……

この記事の続きは、会員サイト「東洋経済プラス」でお読みいただけます(無料)。
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
  • 非学歴エリートの熱血キャリア相談
  • ブックス・レビュー
  • 最新の週刊東洋経済
  • トクを積む習慣
トレンドライブラリーAD
人気の動画
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
銀行員の出世コースに見られ始めた大きな変化
銀行員の出世コースに見られ始めた大きな変化
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
日本企業は米中の板挟み<br>全解明 経済安保

先端技術をめぐる米中の争いは日本に大きな影響をもたらします。海外からの投資は経済を活性化させる一方、自国の重要技術やデータが流出し安保上のリスクになる可能性も。分断の時代に日本企業が取るべき進路を探ります。

東洋経済education×ICT