京セラ「ガラパゴス」スマホがたどり着いた境地 バッテリー交換可、石鹸で洗える耐久性を追求

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京セラのスマホ「トルク」は、アウトドアや建設現場などでの用途に特化してきた(写真:京セラ)

スマホ時代を迎え、苦しい戦いを強いられてきた日本企業の携帯端末事業が息を吹き返しつつある。京セラとソニーの2021年3月期の携帯端末事業はコロナ禍にあっても採算性が向上、いずれも大幅に利益を伸ばした。

両社は不採算市場からの撤退や生産体制の見直しで、少ない販売台数でも利益を出せる体制を作ることに成功。多額の設備投資で大量に販売するアップルのiPhoneなどと正面衝突せず、特定用途に特化することでコアなファンをつかむ路線を着実に歩んでいる。

スペック以外で差異を追求

電子部品大手の京セラは、海や山などのアウトドアや工事現場など厳しい環境下でも使える「タフスマホ」で他社と差別化をはかっている。

2014年に「TORQUE(トルク)」ブランドで販売を開始し、2021年3月には5代目となる機種を投入。京セラのスマホとして初めて5G対応を果たした。対応する半導体が高価なため、投入を見送ってきたが、「世の中に5Gがあって当然という流れが広がってきた」(通信機器事業担当の厳島圭司常務)として対応に踏み切った。

スマホメーカーは軽量や高精細カメラといった性能で勝負するか、中国メーカーのように安さを売りにするかで競争を繰り広げている。だが、トルクは他社のスマホと比べて安価なわけではなく、搭載する半導体なども特別に高性能なわけではない。

代わりにファンにアピールしているのは、スペック表に現れないところでの差異化だ。トルクの事業開発を担当する辻岡正典氏は「他社スマホとのスペック上の比較は商品企画の上でほとんど重視していない」と話す。

例えばバッテリー。他社スマホより充電容量の大きなバッテリーを搭載し、交換しやすい作りにしている。トルクはアウトドア環境で利用されることが多く、ユーザーから「気軽に充電する場所がない」という悩みが寄せられていた。

5代目トルクは、ハンドソープで洗ったり、アルコール除菌シートでふいたりしても壊れないようにした。ハンドソープでトルクを洗うユーザーいるという報告があったためだ。耐久性も、アメリカ国防総省が採用する基準をクリアするほど頑丈で、辻岡氏とともにトルク事業を統括する京セラの湯浅紀生氏は、「これほどまでに厳しい要件を課すスマホはほかにない」と言い切る。

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