慰安婦「逆転判決」で露わになった日韓の温度差 歴史問題解決へつながるとの期待も浮上するが

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4月21日にソウル地方裁判所が、元従軍慰安婦の賠償請求を退けた今判決には、文政権の意向が影響しているとの指摘も(写真:SeongJoon Cho/Bloomberg)

「厳しく冷え込んでいる」と形容される日韓関係に対するいら立ちがアメリカのバイデン政権内で高まっている。ジョー・バイデン政権は会議に会議を重ね、日本、および韓国の三国間の協調の重要性を唱えている。三国の協調はバイデン政権の幅広い対中戦略の要である。同政権は北朝鮮政策の見直し作業を進めてきたが、これについても一定程度三国の強調が重要となってくる。

アメリカは表向き、三国の協調を支持するお決まりの発言を繰り返し、北朝鮮、そして願わくは中国に対する三国の一致した対応を作り出すべく、高官らが会議を重ねている。しかし、実際のところアメリカ高官らは、日韓が作業レベルでの関係立て直しを実質的に進め、さらに戦争中の歴史をめぐる問題に決着をつけるよう二国に迫っている。しかし、歴史上の問題が真剣に討議されていることを証拠立てる事実は今のところ何もない。

韓国側は微妙に前向きな姿勢

4月21日に、ソウル地方裁判所が元従軍慰安婦の請求を退ける判決を出したことにより、日韓両政府は現在の行き詰まりを打破する方策を見出すのでは、との期待が生まれた。韓国の文在寅政権は、両国関係改善に関心のあるところを見せ、ある程度柔軟な姿勢を示してもいる。韓国高官はアメリカ側関係者に、「関係改善の進捗を妨げているのは日本である」とわざわざ伝えている。

事実、韓国側のサインに対する日本政府の対応はそっけないもので、韓国はまず慰安婦、および強制労働に関する提訴の受け付けを停止する措置を取るべきであると主張している。日本の政府関係者は文政権に見切りを付け、韓国における来年の保守政権誕生に期待を寄せている。菅義偉首相、文在寅大統領双方とも、その政権の足元は揺らいでおり、戦略行使の余地は狭まっている。

日韓の架け橋となっている韓国の柳明桓元外相は、「韓国政府が立場を変えて日本に合意できる解決策を提案するとは思えない」と話す。かつて駐日韓国大使を務めた柳氏は、ソウルと釜山の市長選挙で革新系与党が敗北し、文大統領の人気が急落していることから、来年3月の大統領選挙が終わるまでは打開策が見出せないだろうと予測する。

最近の日本の補欠選挙でも、菅首相は同様に弱体化し、戦時中の歴史問題に関する譲歩に反対する自民党の強硬派の影響をさらに強く受けることになった。日本の世論は、日本の保守系メディアによって形成された部分もあり、韓国は頼りにならないパートナーだという見方を示している。

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