宅配の「個人ドライバー」が直面する争奪戦 緊急事態宣言でドライバーの数が右肩上がり

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コロナ禍でネット通販の荷物を運ぶ個人ドライバーが増えている(記者撮影)

「来週の配送案件が取れていない。他のドライバーとの奪い合いになっている」――。4月下旬、個人事業主のドライバーである首都圏の30代男性、Aさんはそう言ってうなだれた。コロナ禍でネット通販(EC)の荷物が増える一方、その配送では“競争”が一段と熾烈化している。

2020年初めに個人ドライバーになったAさんは、もともと工場の派遣社員だった。「以前の職場は残業が多く家族との時間が思うように取れなかった」(Aさん)ため、自分で仕事の案件を選び、労働時間を調整できる個人ドライバーになることを決めた。

Aさんが利用しているのが「アマゾンフレックス」だ。EC最大手アマゾンが手掛けるサービスで、個人ドライバーと配送拠点ごとの案件をマッチングしている。直接業務委託の形で、個人ドライバーは、アマゾンフレックスのアプリ上に表示されている案件の中から自由に受注できる。

報酬額は2時間枠1回で4000円程度。「週に5日間働けば最低でも6万円超は稼いでいる。工場のときと比べると収入はおよそ1.5倍。予定時間よりも早く荷物を配り終える日もあり、家族と過ごす時間が増えた」(Aさん)

個人ドライバーが急増

ところが、2021年1月に首都圏で緊急事態宣言が出されたときに状況が一変。Aさんによれば、「配送案件が取りづらくなり、他のドライバーのキャンセルを待つことが多くなった。配送拠点で見かけるドライバーの数も2~3倍に増えたように感じる」という。ドライバー増加はアマゾンフレックスを利用する複数のドライバーが口にする。

この背景には、コロナ禍での休業や失業が増加していることに加え、個人ドライバーの開業支援を行うサービスが出てきていることもあるだろう。

例えば、スタートアップ企業のグローバルモビリティサービス(以下、GMS)は、配送車両の購入などで金融機関に借り入れを申し込んで与信審査が通らなかった人にも車両をリースしている。

そうしたことが可能なのは、同社はIoTデバイスを通じて走行距離や稼働時間のデータを把握し、貸し倒れの兆候をある程度事前に把握できるようにしているため。仮に利用者の支払いが滞った場合、遠隔制御で車両を円滑に回収できる仕組みを構築している。

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