家庭の鶏肉「ジューシーに焼き上げる」簡単ワザ 「強火」と「弱火」で仕上がりを比較してみた

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チキンソテーを家庭でおいしく作るには(写真:しまじろう /PIXTA)
野菜炒めも、トンカツも、ハンバーグも、冷たいフライパンから弱火で作ったほうがおいしくなる――。科学的な根拠に基づいた調理方法を教える料理研究家・水島弘史氏の書籍『読むだけで腕があがる料理の新法則』より一部抜粋・再構成してお届けします。

水分の流出をコントロール

鶏のモモ肉、胸肉、どちらでもかまいませんが、「皮を香ばしく焼き、内部はジューシーに仕上げたい」と思った場合、多くの人は「まず油をひいたフライパンを強火で熱し、肉を入れて皮目に焼き色をつけ、あとは弱火に落とす」という方法をとりがちです。「皮に焼き色をつけてから、フライパンにフタをして蒸し焼きにする」という方もいるでしょう。

最初が強火であっても、おいしいチキンソテーが絶対にできないというわけではありません。ただ、皮目に焼き色がついてから火を落としても、強火で焦げ目がつくまでに熱したフライパンの表面は確実に200度を超えており、そのまま高い温度での加熱はどんどん進んでしまいます。

また、これはすぐに見た目でわかりますが、急激な加熱をすると、皮はあっという間に縮んでいきます。もちろん、皮だけではなく身のほうも同じです。フライパンの中で、肉はみるみるひと回り小さくなっていきます。

なぜ小さくなるのかといえば、肉の水分が外部に出てしまうからです。フライパンに水分がたまらなくても、出てきた水分はどんどん蒸発しています。つまりジューシーさが失われることで、肉は当然パサつく方向、固くなる方向へと変化していきます。

それは動物の細胞にとってはごく「自然」なことなのです。肉を最初から弱火で加熱することで、水分の流出は最小限ですむ。

それでも、「中まで火を通しながら、しかも水分を保持してやわらかい状態で食べたい」という場合に、唯一効果的な加熱方法があります。それが「なるべくゆっくりと火を通すこと」なのです。とくに、「50度前後」の温度帯をゆっくりと通過させて火を通していくことがもっとも重要です。

厳密に言えば、動物の体温、つまり40度少し前あたりから、ほぼ火が通る60度あたりまでを「低速で加熱する」のが一番重要になります。これは肉でも魚でも基本はまったく同じです。

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