コロナ死亡患者の4割が「元々寝たきり」の波紋 療養型病院は注意!札幌市のデータが示すこと

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近藤:急性期病院は歯車の回転が速く、慢性期病院は遅い。だから滞留が起きている。それで救命センターの医師が、「転院調整」に時間を取られている。このテーマ、これまでもずっと指摘されてきたことですよね。

阿南:そう。引き受ける側のほうが入院期間は長いから、滞留しがちなんだけど、だったら数を増やす。引き受け病床を2倍、3倍確保する。

あとは調整。コーディネーターを置き、マッチングのためのコンピュータのシステムをつくりました。「療養期間終了情報」と「受け入れ可能医療機関情報」を入力しておけば、2時間もあればマッチングできるようになりました。これが「後方搬送調整の神奈川モデル」。

コロナ患者を見る病院の負担を軽くする

――よく、病院がのってきましたね。

阿南英明(あなん・ひであき)/1965年生まれ。新潟大学医学部医学科卒業。横浜市立大学救命救急センター、藤沢市民病院救急部などを経て、2012年に藤沢市民病院救命救急センター長・救急科部長となり、2019年4月から同院副院長。2020年4月に神奈川県健康医療局技監(医療危機対策統括官)に就任。2021年3月から厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリー・ボードの構成員(筆者撮影)

阿南:第3波のバタバタのときにやったから。危機感がみんなにありました。コロナ患者を見る病院の負担を軽くするためですから。

それから、熱が出てどこで診てもらえるかわからない問題。開業医の人たちにじっくり話を聞いたら、彼らはコロナに感染することではなく、風評被害を恐れていました。「コロナの人が行っている」というウワサだけで一般の受診がなくなる、と。

だったら、病院名を一切公表しない仕組みにすればいい。これが「発熱患者の神奈川モデル」。熱や咳、のどの痛みがある人は「発熱等診療予約センター」に電話かLINEで相談すれば、300人のオペレーターを置いているから、調整して20~30分後にどこに行けばいいか、返事ができる。

近藤:受けるところと受けないところがあるから、風評被害が出る。ぜんぶが受ければ、風評は立たなくなるでしょうね。

阿南:そう。予約センターはもうすぐ必要なくなると思います。最後に「地域医療の神奈川モデル」。これは自宅療養者の健康をどう管理していくかというテーマ。軽症・無症状で自宅にいて療養してもらっている人を、病変があったらすぐ対応したい。

自宅を定期的に訪問できればいいのだけど、これも開業医さんに聞いたら、「24時間拘束されるのがイヤだ」と言う。だったら、訪問看護師にやってもらおう、と。県と自治体、地元医師会が協定を結び、ハイリスクの人をリストアップして看護師を中心にサポートしていく。3月末から一部の市で始めました。

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