なぜ日本はマスク好き?その意外な歴史的背景 140年以上前にすでにファッションアイテム化

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感染症予防のためにマスクを着けるようになったのは、それより遅く、1900年ごろから。人から人に伝染する「肺ペスト」が流行し、大阪で数名の医師やその家族が亡くなったことを契機に、医療者が感染症予防としてマスクを着けるようになる。そのマスクは白色が多かったという。

「ペストと関係があるかはわからないのですが、1898年から1902年にかけても東京でマスクの着用が流行しました。防寒の目的だったようです。

そして、1918年に始まったインフルエンザ(スペインかぜ)のパンデミックを機に、日本の多くの人が感染症予防のために使うようになりました。今と似たような状況ですね。

その後、防塵や防寒のために日常でも使われるようになりました。当時の写真などに鼻や口を布で覆った人々が多く登場します」

配膳のときのマスクも自然発生的に生まれた習慣

「日中戦争が始まり、国家総動員法が公布された1938年ごろには、生徒たちが学校でマスクを着けて戦地へ送る物資を作っている様子が雑誌に掲載されています。第2次世界大戦の後、学校給食を配膳する際に衛生管理としてマスクを使うようになったのは、その名残の可能性があります。

皆さんも配膳するときにマスクを着けていた記憶があるのではないでしょうか? これは国や自治体が指導して徹底させたわけではなく、現場から自然発生的に生まれた習慣のようです。今回、私たちが政府や自治体から強制されたわけでもないのに、自発的にマスクをつけたことと、これも似ています」

1900年前後に東京の女性は防寒のために白い絹の襟巻きを鼻と口にかけていた(出所:宮武外骨編『奇態流行史』1922年)

高度経済成長に伴い、日本では1960年代から各地で大気汚染が深刻になっていく。1980年代になると、花粉症が爆発的に流行し始めた。そうした結果、マスクはますます身近になっていく。一方、近年では、若い世代を中心に「だてマスク」なども広がり、マスクがファッションとしても定着。独自のマスク文化が育まれてきた。

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