乗車時に検温徹底、アジアの鉄道「コロナ禍1年」 切符オンライン化進展、行動追跡アプリ活用も

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インドネシア鉄道の列車内で、乗客の検温のため車内を巡回する軍人(筆者撮影)
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インドネシア鉄道(KAI)の2020年の旅客輸送実績が公開された。中央統計局のデータを参照すると、ジャカルタ首都圏の通勤電車を除いた中・長距離列車の年間利用者数は約2880万5000人で、前年の約35%という大幅な減少となった。

当然ながら、これは昨年3月に始まるコロナ禍の影響を受けた結果であり、全世界的な潮流であることは言うまでもない。移動需要が減少する中で、大量輸送を得意としていた鉄道が受けたダメージは計り知れないものがある。

しかし、そんな中でも感染拡大対策をとりつつ列車は運行されている。インドネシアのこの1年間の動きを振り返るとともに、東南アジアの近隣国であるマレーシアやタイの鉄道における感染防止策も併せて紹介する。

決まりを守れば移動は自由

インドネシアは日本と同じく、都市のロックダウンなどの強い活動制限は実施せずに、あくまでも経済活動を優先した。コロナ対策は大規模な社会制限(PSBB)という名の自粛要請のみで乗り切ってきたと言っても過言ではない。ワクチン投与の開始で1日当たりの感染者数は徐々に減少し、政府公式発表を信じる限り、3月に入ってからは1万人を切るようになってきている。

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とはいえ、観光産業は生殺しの状態が続いている。特に当地の鉄道は都市間のビジネス需要がほとんどなく、旅行や帰省が主たる利用目的であるため、その結果が昨年の利用実績にそのまま表れているといえる。一方で、旅行者に対する「厳しい目線」は存在しない。社会制限下においても、健康プロトコールを守っていれば州域外との往来を含めた移動の自由が約束されているからである。

その健康プロトコールとは、簡単に言えば以下の5点だ。

①乗車・搭乗前の検温で37.3度以下
②移動中に密を発生させない
③会話をしない
④医療用マスク着用
⑤指定日数以内に取得した迅速抗体試験またはPCR検査の陰性証明書の所持(通常時3日以内、連休中などは1日以内)

よって、政府が不要不急の移動の自粛を求める一方で、鉄道や航空、宿泊施設は利用者獲得に向けたプロモーションに出ている。とくに航空運賃は通常の半額以下のセールが実施されていることもあり、旅行好きな人はここぞとばかりに出かけている。人々が密集しているジャカルタで週末を過ごすよりも、ガラ空きの飛行機で地方に飛んだほうが安全というわけである。

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