スエズ座礁で浮上、「コンテナ巨大化」の危うさ 国際物流競争で規模拡大、高まる物流リスク

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スエズ運河で座礁した台湾の大手海運会社が運航する巨大コンテナ船「エバー・ギブン」(写真:UPI/アフロ)

スエズ運河で3月23日に発生した巨大コンテナ船の座礁事故。タグボードを使った救助活動により、約1週間ぶりに運航が再開された。

国際物流への影響が長期化する事態は避けられそうだが、船舶の巨大化によって拡大の一途をたどってきた国際物流網の危うさを見せつける形となった。専門家の多くは「危惧していた事態が起きた」と受け止めている。

昼夜分かたぬ作業で運航を再開

座礁事故を起こしたのは、今治造船の子会社・正栄汽船(愛媛県今治市)が所有し、台湾の大手海運会社エバーグリーンが運航する巨大コンテナ船「エバー・ギブン」(Ever Given)。スエズ運河を通航中に強風に見舞われ、運河を斜めに塞ぐ形で座礁した。

その後、船首周辺など約3万立方メートルの土砂の浚渫やタグボート13隻を動員した救助活動により、現地時間29日午後に離礁。同30日午前1時に運航が再開された。

浚渫作業でも離礁できない場合、シシ・エジプト大統領の指示により、クレーンを用いてコンテナの一部を船から下ろすことも検討された。その場合、運河の再開に数カ月を要する可能性もあったが、昼夜を分かたぬ救出作業により、船の離礁にこぎ着けた。

だが、この間の運河の通航不能により、400隻を上回る船舶が運河周辺に足止めされる事態が発生し、少なからぬ船舶がアフリカの喜望峰経由へルートを変更した。早期の復旧により、スエズ運河が長期にわたって通航不能となる最悪の事態は回避されたが、万が一そうなっていた場合には、国際物流への影響は計り知れないものがあった。

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