エーザイ「認知症薬の先駆者」に迫る重大局面

承認目前に来た新薬が決める運命の分かれ道

エーザイの内藤晴夫社長は認知症の治療薬開発に心血を注ぐ(撮影:尾形文繁)

「アルツハイマー病の治療薬開発に成功すれば『勝ち』なんです。だから、そこに全身全霊を傾ける。1秒も無駄にできないし、1秒も気を緩めることができない」

2年前、エーザイの内藤晴夫CEOは東洋経済のインタビューで語気を強めてそう述べていた。

アメリカの食品医薬品局(FDA)が「アデュカヌマブ」を承認するかどうかが決まる2021年6月7日は、エーザイにとって運命の日になる。承認されれば、世界初のアルツハイマー病の治療薬(疾患修飾薬)が誕生する。全世界の患者数は5000万人近くいると言われるだけに、新薬のピーク売り上げ1兆円の大型薬に育つことも夢でない。

提携先のバイオジェンと山分けしても大きな果実が懐に入る。そうなれば、国内製薬大手の枠を抜け出し、がんの次の「認知症」巨大市場で先頭を走る、国際的な製薬企業に飛躍する。

結果が出なければ苦境に

一方、承認が失敗に終われば、経営への打撃は計りしれない。アメリカに続きすでに欧州、日本でも承認申請を出しているが、アメリカの承認が下りなければ欧州、日本の承認もほぼ絶望的になるはずだ。アルツハイマー病を柱とする認知症治療薬に莫大な人と金、時間を費やしてきただけに、次の10年の成長戦略に大きなひびが入る。

エーザイがバイジェオンとアルツハイマー病治療薬の開発で共同戦線を張るのは、巨額の資金負担を両社で分担し、開発品の玉を増やして成功確率を上げるためだった。

ファイザー、ジョンソン・アンド・ジョンソンなど世界の主力プレーヤーの大半が開発レースから脱落し、2019年初頭には3つの有力候補を抱える両社はレースのトップに躍り出た。だが、そのうちの1つ「エレンベセスタット」は開発中止で消えた。アデュカヌマブまで失うようなら、最終治験段階(P3)で残るのは「BAN2401」だけになる。

東洋経済プラスの連載「エーザイ 認知症との闘い」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。同連載では以下の記事も配信しています。
世界中の製薬大手が挫折する認知症薬の「難路」
一度は「死んだ薬」は認知症の救世主になれるか
もしもエーザイの新薬が“脱落”したら
「認知症」を知るための基本のキ

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