外出自粛が気づかせた「コロナ前の日常」の異常 会社や学校に行かないことが救いになった人も

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池上彰氏と宗教学者の釈徹宗の対談をお届けします(写真:村越将浩)
新型コロナウイルスの感染拡大で、病気や死を身近に感じた人は多いのではないでしょうか。死とは何か、人はなぜ死ぬのか。「死と向き合うことで『自分はどう生きるべきか』が浮かび上がってくる」と話すのがジャーナリストの池上彰氏です。今回は「死」にかかわるニュースについて、池上氏と、日本を代表する宗教学者で、浄土真宗本願寺派如来寺住職である釈徹宗氏との対談をお届けします。
※本稿は池上氏の新著『池上彰と考える 「死」とは何だろう』から一部抜粋・再構成したものです。
前回:太古の生物に「死は存在しなかった」驚愕の事実
前々回:東北被災地の霊体験に見る「死との向き合い方」

新型コロナの怖さを見せつけられた

釈徹宗(以下、釈):新型コロナウイルスで、外国人観光客もピタッと止まって、航空・観光業界が大打撃を受け、経済情勢もかなり苦しくなりました。自殺者も増えていて、特に女性が大幅に増加している事実が気になります。

池上彰(以下、池上):私もあっ、と思いました。警察庁の調べで、昨年2020年10月単月のデータですが、男性の自殺者が前年に比べ21.7%増えたのに対し、女性は82.8%も増えていました。

釈徹宗(しゃく・てっしゅう)/1961年大阪府生まれ。僧侶。宗教学。相愛大学副学長・人文学部教授。論文「不干斎ハビアン論」で涙骨賞優秀賞(第5回)、『落語に花咲く仏教』で河合隼雄学芸賞(第5回)、仏教伝道文化賞・沼田奨励賞(第51回)を受賞。著書に『不干斎ハビアン』『死では終わらない物語について書こうと思う』『法然親鸞一遍』『天才 富永仲基』など(写真:村越将浩)

厚生労働省から自殺の傾向などの分析を依頼された女性支援団体などが緊急会見を開いたのですが、新型コロナウイルスの影響で、夫からのDV(ドメスティックバイオレンス)や、子育ての悩み、それに経済問題が深刻化していることが浮き彫りになりました。

相次いだ芸能人の自殺を伝える報道の影響もあったようです。新型コロナウイルスの怖さを見せつけられた気がしました。

一方で、不要不急の外出自粛となった2020年4~5月は、前年に比べ自殺者が約15%少なかった、というニュースを聞いたとき、“そうか、人間って、学校に行かなかったり、会社に行かなかったりしたら死なないんだ”って、ちょっと思ったんですよね。

行かなきゃいけないから苦しいわけで、行かなくてもいいっていう状態になれば、結構、自死は減るのかと。

池上:確かに、会社に行かない、学校に行かないことが実は救いになった人も一定以上いますよね。特に不登校の子どもたちが救われたのかもしれません。

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