DXを加速させるデータ活用法とは

2025年の崖まで4年、BtoB企業の勝ち残り戦略

前回の「ダークデータの整備がDXを促進する」では、ランドスケイプの湯浅将史氏より、蓄積・死蔵しているデータ(ダークデータ)をごみの山のように置いておくとDX(デジタルトランスフォーメーション)の阻害要因となってしまうため、データのメンテナンス体制を構築することが重要だということをお聞きした。
DXの実現においては、データ整備やメンテナンスに加え、いかにデータ活用を行っていくかが重要になる。今回はオンライン施策を起因として、整備されたデータを活用することで、どのように企業活動の全体が効率化していくかについて紹介する。

アフターコロナで変わるBtoBマーケティング

昨今のBtoBマーケティングはオンラインへの対応が求められており、変革の時代を迎えている。

インターネットの普及や顧客接点の多様化、SNSの台頭によるメディアの多様化により、BtoBにおける購買プロセスにも変化が生じている。コロナ禍に伴い、在宅勤務が中心となったことで、対面営業や展示会・セミナーなど、オフラインでの企業活動が制限されており、結果として購買プロセスのオンライン化はさらに進んでいるだろう。

「マッキンゼー社が『米国では新型コロナウイルスの感染拡大により、BtoB企業の57%がマーケティング費用を削減している』という調査結果を発表しています。同調査結果では販売モデルの変化にも触れており、『対面またはフィールドセールスチームでの営業活動を行っていた企業は57%存在したが、現在は20%に下がっている。一方で、オンラインを活用した営業活動は63%から73%に増加』といった調査結果も示されています。この潮流は国際的なものであり、今後は日本においてもオンラインでの営業・マーケティング活動を拡充する必要に迫られると考えています」(湯浅氏)

購買行動の原因を可視化する「オンライン施策」

オンライン施策には、不特定多数のWebサイト来訪者に対するコンテンツの出し分けや、メール・SNSといった個別の担当者にアプローチできるチャネルでの施策など、いろいろな手法が存在する。

また、ウェビナーをはじめとした動画を活用した販促活動も、オンライン上で顧客接点を持てるところに利点を感じ、採用する企業が増えている。

「コロナ禍でマーケティング全体の費用が削減され、営業活動もデジタル化が進む状況下で、低コストかつ高い費用対効果を得ることができるオンライン施策を行い、営業活動につなげていく体制を整えることが、今後企業が生き残っていくうえで重要となるでしょう」(湯浅氏)

オンライン施策は非対面・非接触型の企業活動のため、リアルな場に人を集めるためにかかっていた工数を削減できる。また、顧客企業にとっても「その場にいる必要性」がなくなり、効率的に情報収集を行うことができるようになる。それに加え、オンライン施策には「データ収集」という副次的なメリットが存在する。

「米国の調査会社CEB社によると『BtoB購買担当者は営業担当者に連絡を取る前に、購買プロセスの57%を完了している』という調査結果が発表されていますが、こういった『見えない顧客行動を可視化』できるのは、オンライン施策の重要な役割といえます」(湯浅氏)

オンライン施策によって、企業活動と購買行動にどのようなつながりがあるかがわかり、顧客の購買プロセスを再定義した上でリソース配分を最適化できる。

ただし湯浅氏によると、企業内でデータが散在している状態では、オンライン施策の効果は半減してしまう。

「オンライン施策の効果を最大化するためには、顧客行動をフェーズ分けし、フェーズごとの情報を統合管理することが大切です。データソースごとの顧客行動やチャネル別の顧客反応といった情報を部門横断で活用できる状態にすることで、適切な顧客セグメントだけを狙い撃ちにした施策をプランニングすることが可能となります」(湯浅氏)

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データを整備することは、企業活動全体の効率化に影響する

オンライン施策が売り上げに貢献するには適切なデータ整備が重要だということについて触れてきたが、データ整備のメリットはそれだけではない。

企業活動全体を俯瞰したときに、データ整備は何をもたらしてくれるのだろうか。

「BtoB企業のオンライン施策は企業に対してアプローチを行うことが多く、個人を特定する必要があるチャネルは限られています。見込み顧客となりうる企業のインサイト(直訳では『洞察』という意味だが、転じてマーケティングでは潜在ニーズを指すことが多い)をデータ整備により見いだし、アプローチすべき企業名や部署情報を特定することができれば、オンライン施策を飛躍的に進化させることが可能です」(湯浅氏)

データを整備して行うオンライン施策の1つとしてデジタルマーケティングが挙げられるが、各論だけで施策を進めるべきではないと湯浅氏は話す。

「仮にデジタルマーケティングの効果向上だけに注力しても、DXが実現できるわけではありません。経営トップの意識改革やDX推進部門の知見強化、現場担当者の円滑な業務移管など、全社目線で見ないといけない課題が存在します。その中で、データは組織内における共通理解をつくるための架け橋になる企業資産だと考えます」(湯浅氏)

デジタルマーケティングの具体例として、多くの企業が活用しているのがネット広告である。ネット広告は潜在顧客の認知を高めるために有効な手段だが、これにもオンライン・オフラインをまたいで存在するデータを整備したうえで活用していくというワークフローが重要となる。

ランドスケイプが実施・支援したネット広告の事例を紹介しよう。

事例:データ統合体制の構築と機械学習を活用した自社事例

BtoB企業のネット広告配信では、売り上げ規模や業種などの企業属性をインターネットユーザーに付与してターゲティングを行うケースが多い。

「ランドスケイプでは自社の営業活動や広告配信の効果をより高めるために、見込み度の高い潜在顧客を見つけ出す予測エンジンを開発しました。また、以前から自社製品であるデータ統合ツール『uSonar(ユーソナー)』により、オンライン上の行動履歴から見いだした潜在的なニーズや、オフライン情報からわかる企業情報・企業特徴を統合管理しています。これらの仕組みを有機的に連携する環境を構築したことで、より深い潜在ニーズを特定できるようになりました」(湯浅氏)

このような取り組みにおいて、データは企業単位や部署単位で統合されているが、個人の属性や嗜好性を特定しない中でも広告配信の成果向上が期待できるとのことだ。

「例えば広告配信においては、通常活用されている企業属性だけでなく、バラエティーに富んだ情報を基に企業リストの抽出が可能となり、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の考え方を広告配信にも応用できています。加えて、uSonarと親和性の高いCRM/SFA、MAなどを導入しているかといった情報も活用し、アプローチすべき重点顧客群を高精度に判定しています」(湯浅氏)

広告配信だけではなく、日々の営業活動にもデジタルの力を活用している。

「機械学習を用いた予測エンジンの活用範囲は多岐にわたります。従来の企業属性のみを利用したターゲティング業務で作成したアタックリストと比較して、見込み顧客のターゲティング精度は1.6倍に向上しました。これにより、従来よりも高い成約率でお客様ベースを拡大することに成功しています。また、ターゲティング業務を行う担当者の業務負荷も軽減することができています」(湯浅氏)

事例:大手保険会社

「個人向け・法人向けにさまざまな保険を提供している大手保険会社では、Web媒体を通じた情報提供を行っています。しかし、法人向けの場合、コンテンツは用意しているものの、Webで接点を持った企業の属性分析ができておらず、企業ごとのニーズに対する適切な対応が不十分な点に課題を感じていました」(湯浅氏)

そこで、データ統合ツールを導入し、Webサイトに来訪した企業を判定する機能を活用した。

「Webサイトにどのような属性の企業が来訪しているか、どのコンテンツをよく見ているかなど、詳細な分析が可能になり、来訪企業ごとに適したコンテンツをレコメンドできるようになりました。また、オフラインで管理している取引先企業とWeb来訪企業のデータを統合し、一定期間内にWebサイトに来訪があった未取引企業に対して営業担当者がアプローチを行うというワークフローを整備しました。その結果、従来の未取引企業に対するアプローチよりも3倍の契約数を獲得することができました」(湯浅氏)

WEB接点から潜在ニーズの有無を判定し、適したコンテンツを案内することでDX時代のデジタルマーケティングの成果を高め、企業活動の効率を高めていくことが重要になる。

オンラインデータ・オフラインデータの統合がDX実現を導く

上記の事例によって、オンラインデータとオフラインデータを統合し、適切に活用していくことが重要だとご理解いただけたのではないか。

「BtoBにおいて、データ統合の重要性の高まりを感じている方も増えてきています。しかし、弊社が昨年まとめた『顧客情報管理・活用に関する実態調査レポート』では、顧客・見込み顧客の管理状況について問題意識を持っている企業は44.3%にものぼり、そのうち41.8%が、社内で情報が分散していることを具体的な問題として掲げておりました。データ統合に取り組んでいる企業は増えているものの、満足した成果を得られている企業はまだまだ少ないという印象です。企業活動のデジタル化で十分な効果を得るためには、オンラインデータとオフラインデータを統合し、データの精度を維持していくための基盤を構築することが重要です」(湯浅氏)

DXを実現するには『人材』『システム』『データ』の3つの要素が重要となる。『データ』はいちばん後回しにされがちな要素ではあるが、「DXはデータから」という意識を持つことを推奨する。

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