震災から10年「原発事故」が抱える未解決問題 汚染水や燃料デブリなど多くの課題を抱える

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福島第一原発の写真(写真:AP/アフロ)
東日本大震災から10年。いまなお、さまざまな問題が未解決のまま残っています。神戸市外国語大学総合文化コース准教授の山本昭宏氏が上梓した、『原子力の精神史――〈核〉と日本の現在地』を一部抜粋、再構成してお届けします。

2020年現在、原発災害は終息したのだろうか。福島第一原発の現状を見ると、廃炉作業を悩ませている問題は、汚染水と燃料デブリの2つだ。

1~3号機の原子炉で溶け落ちた核燃料を冷却するために、現在もなお、水が注がれ続けている。建屋の破損した部分などからは地下水や雨水が流れ込み、それも汚染水が増える要因になっている。

では、放射性物質に汚染された水はいったいどれくらいのペースで増えているのか。事故から9年目の2019年度には、1日あたり平均で180トンもの汚染水が生まれていると公表された。

当然ながら、汚染水を減らす努力はなされている。「凍土壁」計画というものがあった(いまもある)。地中に氷の壁をつくって建屋を囲み、汚染水の流出を阻止するという計画である。約345億円を投じ、2016年に実施されたが、効果不明なまま年十数億円の維持費を使っているという状況だ。

廃炉作業を悩ませる汚染水

いまのところ、汚染水対策としては「セシウム除去装置」「淡水化装置」「多核種除去設備」などの装置によって放射性物質を除去する方法が採用されている。しかしながら、処理したあとにもトリチウムという放射性物質が微量ながら残っている。

そのため、処理済み汚染水として保管されているのだが、その保管タンクは原発敷地内に増え続け、タンクの数は1000を超えた。

東電は、2022年夏ごろにタンクが満杯になると説明してきた。だが、朝日新聞の報道によれば、満杯になる時期は、汚染水の増加量が想定より少ないと数カ月ほど遅くなる。

2020年に入って、汚染水の増加量は1日あたり約140トンと、東電の想定を下回っているため、満杯時期は計算上、2023年にずれこむ可能性もあるという(朝日新聞 2020年10月24日)。処理済み汚染水については、関係者が海洋放出の可能性についてたびたび言及し、風評被害を恐れる地元の漁業者たちからは反対の声があがっている。

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