「サントリー天然水」圧倒的に愛される納得の訳 30年で34倍、日本の飲料水市場は急拡大した

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「サントリー天然水」の商品ラインナップ(写真:サントリー食品インターナショナル)

「時代とともに消費者は変わる」

マーケティングや商品開発の現場では、こんな言葉がよく使われる。今回はその実例を見ていきたい。

令和と昭和に挟まれて、影が薄い「平成時代」だが、平成の30年間(31年)で大きく変わったのが「飲料水」(ミネラルウオーター)の需要だ。まず数字で紹介しよう。

・「11万7279キロリットル」
(1989年。国内生産10万1000キロリットル+輸入1万6279キロリットル)
→「400万9579キロリットル」
(2018年。国内生産365万7593キロリットル+輸入35万1986キロリットル)
(日本ミネラルウオーター協会調べ/輸入資料は財務省関税局 日本貿易統計)

平成元年(1989年)と平成30年(2018年)では34倍以上に拡大した。つまり平成時代に日本の消費者は「水を買って飲む」行為が当たり前となったのだ。

CMも印象的だった「サントリー天然水」

この市場を牽引してきたのはサントリーで、飲料水ブランド「サントリー天然水」(2020年に商品名を統一)は2018年から全飲料ブランドで首位。現在まで3年連続1位となっている。ちなみに「天然水」という言葉も同社が生み出したという。

なぜ好調なのか。まずはブランドの責任者に聞いた。

「メーカー視点では『水としてのおいしさ』や『安全・安心な水』という機能的価値と、『天然水』という言葉が持つ情緒的価値を高めてきた結果だと思います。商品ラインナップも炭酸水や果実系を投入し、多様な嗜好に応えるようにしています。

最初に発売したのは30年前の1991年。当時は『サントリー 南アルプスの天然水』という商品名でした。テレビCMでも山や清流という自然を映し、南アルプス天然水をリズミカルに連呼する訴求をしてきました」

平岡雅文氏(サントリー食品インターナショナル ジャパン事業本部 ブランド開発事業部課長)はこう語る。以前は「サントリー烏龍茶」のブランドマネージャーも務めた人物だ。

当初は「世間の水より、南アルプスの天然水」という、同社らしいひねりで訴求したが、やがて「山の神様がくれた水」と自然への畏敬を打ち出す。日本を代表する俳優・大滝秀治氏の演技やナレーション、歴代の“南アルプス少女”を覚えている人もいるだろう。

後述するが、同社の工場立地も「水源」にこだわる。かつては「山崎の名水」(1983年)や「サントリー南アルプスの水」(1989年)という業務用商品を飲食店向けに卸していた。

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