シャープ「不正会計」で露呈したガバナンス不全 シャープ出身役員へ迎合と忖度、意識の甘さも

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子会社で不正会計が発覚したシャープの堺市にある本社(撮影:梅谷秀司)

不正会計の根は深かった――。

3月12日、家電大手のシャープは2020年4~12月期決算の発表とともに、決算発表遅延の原因となっていた不正会計の詳細を明らかにした。

調査報告書によると、不正会計が発覚したのはスマートフォン向けレンズを手掛ける子会社のカンタツ。2018年3月にシャープの傘下に入ったが、2020年3月期までの2年間、売り上げの架空計上や循環取引の手法を使い、売上高の4割にあたる92億円を過大に計上していた。

売り上げの架空計上や循環取引が判明

不正は2020年11月にシャープによる監査で発覚。同12月に外部の弁護士や会計士らで構成する調査委員会を設置し、当時のカンタツ幹部にヒアリングを行うなどして調査を進めていた。

具体的には、実際には注文がない売り上げの架空計上や先行して販売した取引の不適切な売り上げへの計上、簿価のない在庫を販売して買い戻す循環取引など多岐にわたる。また不正はカンタツ本体だけでなく、中国にある同社の製造子会社2社でも行われていた。

ではカンタツはなぜ不正に手を染めたのか。報告書はその動機や背景に関して、「経営層が事業計画の達成についてプレッシャーを与えたこと」を挙げる。

カンタツはシャープによる子会社化の前から業績が低迷しており、子会社化後はシャープから送り込まれた新社長のもと業績目標の達成が強く求められた。

報告書はさらに、シャープ出身役員への迎合・忖度があったと指摘し、「(業績目標が)未達となった原因分析やその後の挽回策について詳細説明を求められることとの負担も相まって、(中略、事業計画が)未達となる事態を回避しなければならないという雰囲気が醸成」されたと指弾している。

また、カンタツは新規株式公開(IPO)を目指しており、その方針をシャープも引き継いでいた。そのため、上場に向けて事業計画の順守も厳しく求められていた。

IPOを目指していたことで管理体制が甘くなっていた面もある。シャープの野村勝明社長は12日の会見で「IPOを目指していたので(カンタツの)独立性を重視していた。言い訳ではないが、監督が甘かった」と釈明した。

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