日本人の知らない経済政策「PGSを増やせ!」 衝撃の事実!途上国の半分しかない日本のPGS

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財政の問題は日本にとって重要ですが、「生産的政府支出(PGS)」という重要な視点が欠けている、といいます(撮影:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
彼は退職後も日本経済の研究を続け、著書『日本企業の勝算』などで継続的に、日本を救う数々の提言を行ってきた。
アトキンソン氏の従来の研究の特徴の1つは、日本経済の問題点を「供給側」から明らかにしてきたことにある。そこで東洋経済オンラインでは、アトキンソン氏による「需要側」を分析も紹介していく。
今回は「財政出動不要論」について検証し、日本の議論に欠けている「生産的政府支出(PGS)」という考え方を紹介する。

「財政出動不要論」について考える

前回の記事(仮にMMTが正しくても「特効薬にはならない」訳)では「政府によるさらなる財政出動は有効なものの、それが必ずしも特効薬になるわけではない」ことを確認しました。

さて、財政出動については必要性を訴える人がいる一方で、反対の声を上げるエコノミストも少なくありません。そこで今回は財政出動に反対する人の意見を検証し、両者の妥協点を探ります。

特に記事後半の「生産的政府支出(PGS)」の議論に注目していただきたいと思っています。「政府支出は経済成長に対してマイナスである」という当時のコンセンサスを大きく変えたPGS論文が1990年に発表されたことは、日本にとってきわめて大切な新しい論点です。

反対意見1:政府支出を増やすと、生産性が上がっても、労働生産性は上がらない

まずはこの意見から説明します。

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改めて、生産性の本質を確認しましょう。生産性は、創出された付加価値の総額(=GDP)を全国民の数で割ったものです(1人あたりGDPとも言われます)。さらに分解すると、付加価値総額を働いている人数で割った金額(=労働生産性)に、全国民に占める働いている人の比率(=労働参加率)をかけたものが生産性です(生産性=労働生産性×労働参加率)。労働生産性が1000万円で、労働参加率が50%であれば、生産性は500万円となります。

一般的に、政府が支出を増やすと需要が増えます。増えた需要に応じて供給を増やすため、企業は人を雇います。その結果、失業率は下がり、労働参加率が上がり、生産性も上がります。

例えば、労働生産性が1000万円の場合、労働参加率が50%から60%まで上がれば、国全体の生産性は500万円から600万円まで上昇します。

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